第122回 未来の昆虫学者サマーキャンプ in USA

アメリカオオミズオアオ(鱗翅目:ヤママユガ科)
The luna moth, Actias luna
狩猟小屋のライトにやってきたアメリカオオミズアオ。網戸にとまっているところ。淡いライムグリーン(青白色)をしていて、尾が長いのが特徴だ。北米で一番大きなガの部類に入る。
前翅長:約50 mm 撮影地:レデン州立森林公園(Redden State Forest)、デラウェア州
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 この6月のこと。アメリカのスミソニアン自然史博物館の デイヴィッド・アダムスキー博士(Dr. David Adamski)から誘いを受け、「若い昆虫学者たちのサマーキャンプ」に参加してきた。ぼくは日本で、昆虫のイベントを時折させてもらっていることもあり、その様子を見学してみたいという思いもあった。

 デイヴィッドは、ガを専門とする昆虫学者で、なかでもキバガというグループのネマルハキバガ科を研究している。ぼくが小さいガを専門にするに至った「火付け役」で恩師でもある。かれこれ20年以上の付き合いで、今となっては、ぼくの叔父のような存在だ。

2015年のサマーキャンプで採集したネマルハキバガ科のいろいろな種を板に展翅し乾燥させた標本をデイヴィッドが見せてくれた。全部で約7種、そのうち1種は新種だそうだ。グレーから茶色をした地味なガで、世界でも研究者はほとんどいない。(写真左下に著者の親指)
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 サマーキャンプの前日にコスタリカからワシントンDCへ移動、その日はスミソニアン博物館群の近くにあるデイヴィッドの自宅に泊めてもらった。翌日は朝早くから東に向け出発、2時間ほどのドライブの後、デラウェア州のジョージタウンという町の近くにあるレデン州立森林公園に到着した。日差しは強いが、涼しい風が吹いていて日陰に入ると少し肌寒い。森はコスタリカに比べると静かで、小鳥たちのさえずりが遠くから聞こえてくる。

公園内にある1903年築の大きな狩猟小屋(現在は狩猟は行われていない)で寝袋を持参しての2泊3日のサマーキャンプ。ここを拠点に昆虫採集や観察をする。
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銀色に輝くイトトンボ。レデン州立森林公園に着いてスグに池の周りの草むらで見つけた。羽化して間もないから体の色が出ていないのか、元来こんな色のイトトンボなのか? 近づくとあっと言う間に空高く飛んでいった。
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森の中は新緑がまぶしい。見上げると、目についたのが薄茶色した球形のタマバチの虫こぶ。タマバチの Disholcaspis quercusglobulus がコナラの一種(Quercus alba)の枝に形成したものだ。
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 参加者が集まってきた。「若い昆虫学者の集まり(the young entomologist group)」というので、てっきり高校生から大学院生が集まっての調査かと思いきや、6歳から14歳の子どもたちとその家族の集まりだった。楽しくなりそうだ。このキャンプは、ワシントン昆虫学会が中心になって、昆虫のことや自然科学を年間を通じて啓発する家族参加型の活動の一環だ。

 進行役はデイヴィッド。ほかにも昆虫やほかの生物の専門家などを招いている。子どもたちと森の中で昆虫を探したり、観察したりしながら、専門家が自然や昆虫について解説し、観察や研究の仕方を指導する。今回はスミソニアン自然史博物館からガの世界の不動の大御所、これまでに6つものガの新しい科を発表している、ドン・デイヴィス博士(Dr. Donald R. Davis)とその家族も参加していた。

 現地に着いてから、ぼくもゲスト専門家として指導を依頼されたが、唐突だったので今回は勘弁してもらって、主に活動の様子を記録する写真撮影役を引き受けた。

柄の短い網を使って、草の合間にいる小さな昆虫たちをスイーピングして(すくい捕って)いるところ。「この虫はなんですか?」とデイヴィッド(矢印)に聞く。この後、みんなはダニまみれになっていた。
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 気温が上がってくると、昆虫たちが飛び始めた。チョウやムシヒキアブのほか、たくさんのトンボがあちこちで飛んでいる光景が特に印象的。子どもたちは一心に虫捕り網を振り回している。こうして専門家たちと一緒に森を歩くだけで、未来の昆虫学者はいろんな刺激をもらっているのだろう。

 ぼくは、コスタリカの森とはまた違った環境と、そこに住む昆虫たちを楽しみながら子どもたちの活動を見守った。1日目が終わり休んでいると、着ている衣服の下をうごめくものが・・・ダニ2匹を見つけた。

次のページは<2日目はアメリカカブトガニを見学に>です。

パキディプラックス・ロンギペニス(トンボ目:トンボ科)
A female Blue Dasher, Pachydiplax longipennis
トンボの一種で、英名はブルーダッシャー。「青いダッシュするやつ」とでも訳そう。池の近くの枝にとまっていた。オスは日本のシオカラトンボの青に似ている。これはメス。同定はDr. Oliver Flint。
体長: 約40 mm 撮影地:レデン州立森林公園
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プラセミス・リディア(トンボ目:トンボ科)
A juvenile male of Common Whitetail, Plathemis lydia
森を少し入って出会ったトンボの一種。未成熟のオスで、日だまりの中を飛んだりとまったりしていた。 成熟すると、胴部が塩を吹いたような白い青色になる。
体長: 約40 mm 撮影地:レデン州立森林公園
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プリオノクシストゥス・ロビニアエ(鱗翅目:ボクトウガ科)
Carpenterworm Moth, Prionoxystus robiniae
北米のほぼ全域で確認されているボクトウガの一種。触角が青っぽい。写真では見えないが、後翅はオレンジ色をしている。
前翅長:約70 mm 撮影地:レデン州立森林公園
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コナラの仲間の木の幹にとまっているプリオノクシストゥス・ロビニアエ(ボクトウガの一種)。どこかわかりますか? 答えは3ページ目にあります。
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