第121回 魔女の顔に見える? ツノゼミ写真館

ミカヅキツノゼミの1種(カメムシ目:ツノゼミ科:ツノゼミ亜科)
A treehopper, Cladonota sp., male
第28回でも紹介したミカヅキツノゼミの真横からの接写。カメラのレンズを1センチの距離まで近づけて撮影してみた。ツノの表面に凹凸がある。これはオスで、メスは確認できていない。
体長:約5 mm 撮影地:サラピキ、コスタリカ
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 今回もミカヅキツノゼミの仲間を、全部で5種紹介しよう。

 その前に一つ補足。前回、おそらくクラドノータ・ゼレドニ(Cladonota zeledoni)だろうと紹介したミカヅキツノゼミ(下)について、専門家のフリン博士(Dr. Dawn Flynn)から連絡が入った。

新種の可能性が高くなったミカヅキツノゼミの1種(第120回紹介)のメスが翅を広げているところ。撮影地:モンテベルデ、コスタリカ。
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 写真はメスだが、これがもしクラドノータ・ゼレドニであれば、オスと同様にツノが風船のように膨らんでいて、こんな風にくねくねしてはいないと言う。前回紹介したツノゼミは、おそらく新種であろうとのことだった。

 この写真を使って、ツノゼミの体のつくりを少し説明しておこう。

 写真の右下、くねくねとしたツノの下にあるのが頭部。そのすぐ後ろ、胸部から前脚と中脚が見える。翅は左右に広がっていて、前翅が茶色く、後翅は透明で脈が見えやすい。そして胴部の上から後ろ(左上方向)へ真っすぐ伸びているものもツノだ。くねくね伸びる部分と後方へ伸びる部分の全体が、前胸背(ぜんきょうはい)と呼ばれていて、すなわちツノということになる。この後、もっと「ヘン」なツノも登場するので、ここでの説明が役に立てばと思う。

 次にご覧いただきたいのが、下の幼虫。コスタリカのカリブ海側の低地の熱帯雨林、ハメリア(Hamelia)というアカネ科の花の付け根にいた。植物に赤い部分があるのと同じように、体に赤い部分が見られる。この植物で暮らすことに特化しているのだろうか?

第28回で紹介したミカヅキツノゼミの幼虫を横から見たところ。体長は約5 mm。
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 この幼虫を飼育してみると、冒頭の写真のミカヅキツノゼミに変身した。連載の第28回でも紹介したツノゼミだ。眼の色が赤く、ツノの形もほかの種とは微妙に違っている。ぼくがコスタリカで見てきた三日月形の種のなかで眼が赤いのはこの種だけだ。

眼の赤い三日月形のミカヅキツノゼミを正面から見たところ。羽化&ツノ化したてで、半透明の白から少しずつ黒っぽくなってきたところを撮影。
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 下の写真は幼虫の抜け殻。どのツノゼミも、幼虫にはそれぞれ特徴があるので、幼虫や幼虫の抜け殻を標本にすれば、分類や種の特定に大変役立つ。また、幼虫が生活している植物や幼虫の行動などを記録していくと、成虫が似ていても幼虫の特徴によって別種であると確認できることもある。

眼の赤いミカヅキツノゼミの終齢幼虫の抜け殻。
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 次は、ぼくがコスタリカに来て初めて出会ったミカヅキツノゼミ。首都サン・ホセ近郊にあるコスタリカ大学のキャンパスに生息している。この種は、幼虫と成虫をキク科のモンタノア(Montanoa)という植物でよく見かける。終齢幼虫は白っぽい緑色をしていて、葉の新芽の横でじっとしていることが多い。

ミカヅキツノゼミのクラドノータ・アピカリス(Cladonota apicalis complex)という種に近い仲間。オスを横から見たところ。その奥、新芽の付け根辺りに白っぽい緑色の幼虫がいる。オスの体長は約5 mm。撮影地は、サン・ホセ、コスタリカ。
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上のミカヅキツノゼミの終齢幼虫。茎の途中、葉の付け根から出ている若葉に並ぶようにいるところ。3匹写っている。体長は4~5 mmで、大きい幼虫はメスになって、小さい幼虫はオスになるのだろう。
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 ところが、終齢幼虫のひとつ手前の亜終齢幼虫には、黒い模様が入っていて、植物の先端の小さな若葉の間にいることがわかった。先端の若葉にも少し黒くなった部分があって、上手に紛れ込んでいる。

上のミカヅキツノゼミの亜終齢幼虫(終齢幼虫のひとつ手前)。頭を下にして先端の若葉に3匹紛れ込んでいる。黒い模様が入っているが、若葉にも少し黒くなった部分があって上手に紛れ込んでいる。体長は3~4 mm。終齢幼虫も1匹、若葉の右下の陰になっているところにいる。
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上のミカヅキツノゼミの亜終齢幼虫。葉の上にいるところを正面から撮影。眼はピンク色をしていて、その下にタカラダニの幼虫(赤)がくっついている。頭の正面下の白い物体は、おそらく何らかの植物の毛の破片。
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