第141回 ヘッドライトが輝く昆虫、ヒカリコメツキ

闇の中、オレンジ色に光る飛行物体はナニモノ?
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 雨季が始まったモンテベルデ。森は一日中濃い霧で白く覆われていて、夕方から朝までシトシトと小雨が降っている。例年よりも午前中に晴れることが少なく、雨季の終わり、9月から10月のような天候だ。

 でも、そんな湿度たっぷりの環境を大喜びで動き回るのが、昆虫たちとぼく!(笑) 今回は、そのなかでも最近よく目にしている昆虫を紹介しよう。

 ヒカリコメツキという甲虫だ。ひっくり返すとパチン!と跳ねて起き上がることで知られるコメツキムシの仲間で、特徴はその名の通り光ること! 中南米に生息し、ホタルや深海生物と同じように生物発光をする。米サウスダコタ州立大学の専門家Paul J. Johnson博士によると、コスタリカに5~6種いるそうだが、どれもよく似ていて同定するのは難しいという。

ヒカリコメツキ(甲虫目:コメツキムシ科:サビキコリ亜科Agrypninae)
モンテベルデで見かけるピロフォルス(Pyrophorus)属の1種。体長は約30 mm. 丸く白っぽい光る部分の直径は1.5 mmほど。
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 午後6時半、日が沈んでモンテベルデの家の周りが暗くなるころ、森や林縁をオレンジ色の光がサーッと飛び始める。ホタルも同じ環境にいるけれど、ホタルの場合は飛ぶスピードが遅く光が点滅しているのに対し、ヒカリコメツキは速くて光が点灯したままなので、暗闇でも区別できる。

細い枯れ枝の上をヨチヨチ、ゆらゆら歩くヒカリコメツキ。オレンジ色のヘッドライトの残像を撮影してみた。露光時間は約5秒。午後7時を過ぎると、飛び回っていたヒカリコメツキは地上付近に舞い降り、細い枯れ枝の上を歩いていることが多い。撮影協力:Kento Nagata
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【動画】ヘッドランプを点灯して歩くヒカリコメツキ

 もうひとつ、大きく違うのは光る場所。ホタルはお尻(胴部の先)に1つか2つの発光器があるが、ヒカリコメツキは3カ所。しかも、お尻ではない。

 頭の後ろの胸部に丸い発光器が2つあって、英語で「ヘッドライト」と呼ばれている。目玉が光っているみたいだ。そしてもう1つは腹側、胸とお腹の間にある。ふだんは隠れていて、お腹を反らせたときだけ光っているのが見える。

ヒカリコメツキの「ジェットエンジン」。腹側、後ろ脚の間に見える白っぽい膜から光を放っているところ。オレンジ色の光は、懐中電灯などの光を当てると黄色っぽく見える。膜の大きさは4×2 mm。
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