第117回 育ててみたら『鞍馬天狗』ツノゼミになった

ハイフィノエ・アスファルティナ(カメムシ目:ツノゼミ科:Darninae亜科)
A treehopper, Hyphinoe asphaltina
茎にとまる成虫。オスはメスよりも一回り小さい。ちなみにハイフィノエ属のツノゼミは中南米に生息、約15種がこれまでに確認されている。
体長:9~10 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 見つけて飼育し始めてから約10日後、その幼虫は成虫になった。

 体長は10ミリ程度。ツノの前の方が「壁」のようになっている。飼育前に予想していた通り、それはハイフィノエ・アスファルティナだった。幼虫と成虫がハッキリ繋がり、脳もスッキリ。

 それにしても、このツノゼミの変貌ぶりは印象的だ。成虫は幼虫から想像もつかないかたちと色をしている! 「どこかで見たことのあるような姿やな~」と思い、何に似ているのかを調べてみたら、古い映画に出てくる頭巾をかぶった『鞍馬天狗』にたどり着いた。だから、このツノゼミを見るたびに、ぼくは、『鞍馬天狗』を思い出してしまう。

ハイフィノエ・アスファルティナの成虫を正面から見たところ。頭の上へ大きく広がるように伸びる濃いこげ茶色のツノと、白く輝くような毛が特徴的だ。
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ハイフィノエ・アスファルティナの成虫を真上から見たところ。楽器のトロンボーンのケース(入れもの)に似ている?
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 ついこの間も、この『鞍馬天狗』のような成虫を見つけ採集してみたところ、網の中で動かなくなっていた(下の写真)。どうしたのか? 網から取り出そうとすると、木の破片のようにコロコロと転がる。 

 これは・・・ 死んだ振りをして木の破片になりすましているのではないか? オモシロイ! このツノゼミの色とかたちの意味が、浮かび上がってくるように思えた。

網の中で死んだ振りをしているハイフィノエ・アスファルティナの成虫。お尻の方、翅の先が少し欠けているのは、たぶん鳥がついばんだ痕(ビークマーク)。
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西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html