第137回 生きたツノゼミを食い破ってハチが出てきた!(動画アリ)

バラノトゲツノゼミの1種(カメムシ目:ツノゼミ科:ツノゼミ亜科)
A treehopper, Umbonia ataliba (Hemiptera:Membracidae:Membracinae)
体長:約10 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 研究のため、ぼくは以前より頻繁にツノゼミの幼虫を飼育している。今回は、そんななか起きたある驚愕の事件を紹介しよう。

 2016年12月21日、バラノトゲツノゼミの1種ウンボニア・アタリバ(Umbonia ataliba)の幼虫を採集し、飼育を始めて5日目のことだ。羽化して成虫になる様子を撮影しようと、部屋(寝室兼ラボ)で簡易撮影スタジオを組み、幼虫たちの観察を始めた。こんな感じだ。

撮影中の様子。Photo by Akiko Tanaka
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 ツノゼミの幼虫たちがいる枝をビンに挿し、羽化しそうな幼虫にカメラを向ける。羽化する手前の幼虫(終齢幼虫)もいれば、さらにその手前の幼虫(亜終齢幼虫)もいて、周りでウロウロしていたりじっとしていたり。

中央に羽化しそうなメスの終齢幼虫。右と下にオスの終齢幼虫。矢印のところに亜終齢幼虫たちが集まっていた。
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 撮影を始めてしばらくすると、小さな異変が起きた。茶色い小さなハチの仲間が枝の上をシャシャシャ、スルスルスル~と歩き回り始めたのだ。

 ん~、部屋の中にいたものが照明に引き寄せられやって来たのだろうと思っていると、そのハチは1匹、もう1匹とどんどん増えていく。よく見ると、それはトビコバチという寄生バチの仲間のようだ。

枝の上を歩いている寄生バチのトビコバチの仲間(矢印)。大きさは約3ミリ。
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 いきなり現れた何匹もの寄生バチ・・・単に明かりに集まってきたのではなさそうだ。このハチが寄生していた昆虫の死骸がどこかにあるかもしれないと、枝葉のあちこちを確認してみる。しかし、死骸どころか、枝にもそれらしき穴は見当たらない。

 ツノゼミの幼虫に寄生するトビコバチがいることは知っているが、ここにいる幼虫たちはみんな元気に枝の上を歩いていたり、かたまっていたりと、寄生バチにやられて死んでいる(ミイラのようになっている)ものは1匹もいない。

 そんなことを考えている間にも、また1匹、2匹とハチが枝の上を歩き始めた。どこからわいてくるのか? まさか生きているツノゼミの幼虫から?

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