第136回 イモムシのうんちにそっくりなツノゼミ

ムシノフンツノゼミの1種(カメムシ目:ツノゼミ科:ツノゼミ亜科)
A treehopper, Bolbonota sp. (Hemiptera:Membracidae:Membracinae)
正面からの接写。
体長:約5 mm 撮影地:サン・ホセ、コスタリカ
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 チョウやガの幼虫であるイモムシやケムシたちは、草木の葉などをたくさん食べ、そしてたくさん排泄する。そんなフンが、葉の上に落ちていたり、茎にくっついていたりすることがある。

 形はほぼ球形か気持ち楕円形で、大きさは2~5ミリ程度。色は茶色から黒っぽいこげ茶色をしていて、表面はシワが入ったように少しデコボコしている。

 そんなフンにそっくりなツノゼミが、中南米の熱帯雨林から雲霧林に生息している。ムシノフンツノゼミ(Bolbonota属)の仲間だ。

 ここでクイズです。下の2枚の写真、どっちがツノゼミだかわかりますか?

(1)
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(2)
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 答えは最後のページに拡大写真とともに発表しますが、今回はこのムシノフンツノゼミの卵や幼虫を含め、興味深い生態を紹介します。

 ムシノフンツノゼミの仲間はどれも「シンプル」な装いながら、たくさんの種がいるため、種を同定するのが極めて困難。まだまだ新種だらけのグループと言っていい。でも詳しく見ていくと、かたちも大きさも色も種ごとで微妙に違っていて、調べがいがある。

ムシノフンツノゼミがマメ科の葉の上にかたまって、いるところ。撮影地は、コスタリカの首都サン・ホセ近郊。
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 ツノは翅の上後方に伸びるヘルメット型で、デコボコして、シワが入ったようなイモムシのフンのような質感がある。脚は平たく幅広で、止まっているときに全体を丸く見せるのに役立つ。番外編13で紹介したマンマルコガネに繋がる「ロボット系」の形態だ。

キク科の植物にいたムシノフンツノゼミ。真横から撮影。微妙な体形の違いに加え、翅の部分に模様が入っていたり、細かい毛の生え具合が違っていたり、それぞれの種で違うようだ。大きさは3ミリほど。撮影地は、ブラウリオカリージョ国立公園。
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 ガの幼虫を飼育して、ほぼ毎日フンと向き合っているぼくは、フンに擬態しているこのツノゼミのことも愛おしく感じる。

 葉の上にぽつん!と黒くて丸い物体があると、イモムシのフンなのか、ムシノフンツノゼミなのかわからないことも多い。そんなときは顔をフンに近づけて、ジーッと吟味してみる。それでもわからなければ、指でそーっとつまんでみる。つまむ直前にピョーン!と瞬間移動するように飛んで逃げれば、それはムシノフンツノゼミだ。興奮する(笑)。

 次のページは<ムシノフンツノゼミの不思議なムース状の卵>です。

首都サン・ホセ近郊でマメ科の植物にいるのをよく見かけるムシノフンツノゼミ。左がオス、右がメスで交尾中。体長はメスが5ミリ程度。オスはメスより一回りから二回りほど小さい場合が多い。
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