第4回 本当に恐ろしい「カルデラ噴火」とは

 実は、現時点で3Dでの火山のシミュレーションは、まだ世界的にも珍しいそうだ。10キロ×10キロ×10キロの範囲といえば、浅めのマグマ溜まりしか表現できていなはずだけれど、それでも、相互に影響を及ぼしあい、時間変化する100万個の粒子という気の遠くなるような世界である。おまけに液体からガスへ状態が変わる瞬間を扱わなければならないなど、手間も多い。手法の洗練も必要だろうし、基本的には、スーパーコンピュータの能力が上がるのを待たねばならないのかもしれない。

 なお、シミュレーションで出てきた減圧発泡というのは、火山の噴火ではとても大事なプロセスだ。マグマにはたくさんガスが溶け込んでいる。地表近くまで上がってきて、マグマが冷え、圧力も下がってくると、あるところで一気にガスを放出する。噴火というと、まず噴煙が上がり、そのあとでマグマなどが流れ出すイメージがあるけれど、最初にドンと噴くのは、その時のガスだ。世界的に有名なハワイ島のキラウエア火山など、四六時中溶岩を吐き出しているところは、地上に出る前にどこかでガスをゆるやかに放出するルートがあって、爆発的な噴火にはならずに済んでいる。あの溶岩は、まさに「気の抜けた」状態のものである。

 もっとも、将来的に予知が期待される「小規模な」水蒸気爆発については、マグマが減圧発泡するよりも前に、地下水を熱し、それが爆発的に噴き出す。藤田さんはこういったシミュレーションもしていかなければならないと考えている。

つづく

※第5回「3.11地震の火山への影響を百年後まで試算してみた」は明日10月6日公開の予定です。

藤田英輔(ふじた えいすけ)

1967年、島根県生まれ。理学博士。防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニット総括主任研究員。東北大学連携客員准教授。山梨県富士山科学研究所特別客員研究員。1993年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、同年防災科学技術研究所入所。入所以来、火山観測網の運用やそのデータ解析、数値シミュレーションなどにより火山噴火のメカニズムの解明についての研究に従事。近年は特に地震・火山噴火の連動性に関する評価や地下でのマグマ移動現象の解明について取り組むとともに、欧米やアジアの火山コミュニティーとの連携強化に尽力している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、『雲の王』と同じく空の一族の壮大な物語を描いた『天空の約束』(集英社)、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。2015年10月に有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を開始した。