第17回 「巨大空間」の新発見に議論沸騰、その正体は

「ScanPyramids Big Void」と書かれた部分が、発見された空間の位置。ここでは水平で表現されている。(Courtesy of the Scan Pyramids Mission)
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 2017年11月2日、国際的な総合科学誌『ネイチャー』に、ギザの大ピラミッドに関する画期的な論文が発表された。タイトルは「Discovery of a big void in Khufu's Pyramid by observation of cosmic-ray muons(宇宙線ミューオンの観測による、クフ王のピラミッド内部の巨大空間の発見)」である。

 発見したのは、日本、フランス、エジプトの共同研究チーム「スキャン・ピラミッド計画」。彼らは宇宙から降り注ぐ素粒子の一つ「ミューオン(ミュー粒子)」をとらえて解析する手法で、X線で人体を透視するように、その巨大な構造物を透視することに成功したのだ。

 大まかに説明すると、今回、チームは3つの異なるミューオン観測装置を用いて大ピラミッドを調べた。すると、3つの装置がそれぞれ巨大な空間を発見した。場所は地上から60~70メートル付近、ピラミッド内部にある「大回廊」と呼ばれる空間のちょうど真上に位置する。長さは少なくとも30メートル、断面の大きさ(幅×高さ)は確定できないが、大回廊のそれ(おおよそ18平方メートル)に匹敵するという。ただ、これが1つの巨大な空間なのか、あるいは複数の空間が隣接しているのか、そして水平なのか、傾斜しているのかなど、細かいところはまだわかっていない。

充填材を入れる場所か?

 このニュースを最初に聞いたとき、私はにわかには信じられなかった。発見された場所と大きさが、あまりに想定外だったからである。しかし、もし本当にあるとすれば、それは「充填材」が入っている複数の空間が検出されたのではないかと思った。

 充填材とは、整正された石材と石材の間に入る「瓦礫や砂」のこと。これを用いることで、建築物を作るためのコストを下げることができる。この方法は古代エジプト建築ではよく知られていて、神殿の塔門や、中王国時代のピラミッドなどで使用されている。最近では、クフ王の大ピラミッド内部にもいくつもの充填材を入れる空間があることが、私たちが調査した結果からも、推定されている。

アブ・グラブの太陽神殿の壁に見られる充填材。(写真提供:河江肖剰)
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 11月4日には、この発見を題材にした特別番組がNHKで放送された。そのスタジオ収録の際、今回の発見者である森島邦博先生(名古屋大学特任助教)と髙﨑史彦先生(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)にお会いする機会を得たので、先述した私の疑問をぶつけてみた。彼らの答えは極めてシンプルだった。

「空間である大回廊や王の間と同じように検出されている場所を、空間と考えるのは自然である」

 ギザの大ピラミッドの石材の大部分は石灰岩でできていて、その密度は少なくとも1立方メートルあたり1.28~2.71グラムと幅がある。そして充填材の密度はわかっていない。そのため彼らが行ったのは、内部の細かい密度分布の解析ではなく、超高密度か超低密度か(平たく言えば、空間があるかないか)を調べたのである。それが可能だったのは、ミューオンの観測場所である「女王の間」から、すでに「大回廊」や「王の間」という超低密度の場所が見えていたからである。

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