第4回 地上に生まれた最初の生命

テーマ:地球上に生命が誕生するきっかけを作った、シンプルな構造の生命体と有機化学物質。
最初の発見:1950年代以降、生命は温暖な浅い海から生まれたとする発想をヒントに、天体それぞれに、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)があると考えられるようになった。
画期的な発見:1970年代以降にさまざまな発見が相次ぎ、ハビタブルゾーンという考え方は時代遅れになった。
何が重要か:生命の起源を調べれば、他の星に生命体がいる可能性を予測できる。

極限環境微生物を発見してからというもの、生命が存続できる条件に関する考え方がここ数十年で、がらりと変わった。たとえば、ここにあるスルホロブス・アシドカルダリウス(超好熱好酸性古細菌)は、高温や極端な酸性環境の中でも生き残ることができる。(Dr. Terry Beveridge, Visuals Unlimited /Science Photo Library)
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 化石を調べると、地球上に生命が誕生したのは今から36億年以上前にまでさかのぼることがわかる。しかし、動物や植物といった複合生物が現れたのはほんの6億年ほど前だ。原初の生命体は、シンプルな構造の単細胞生物で、あまりにも小さく繊細であったため、存在していた痕跡は化石にかろうじて残されているだけだ。それも、化石そのものに刻印されているのではなく、微量の元素として検出されるだけだ。そのうえ、地球は誕生の過程で地殻変動や化学反応のサイクルを繰り返しているため、原初からまったく形を変えていない岩などほぼ存在しない。(特にオーストラリアを中心に)発見された原始生命体の痕跡を見ると、地球最初の生命体は、微生物マット、つまり、単純構造の有機体が日当たりの良い浅瀬から大量に発生し、層を成していたことが示されていた。旧い世代の死骸の上に砂や沈殿した土や泥が積もり、新しく生まれた世代がその上で繁殖した。長い年月をかけてこれを繰り返していくうちに、ストロマトライトという層状の岩石の柱が作られていった。今でも世界各地でこうした不思議な有機体の生きた標本を見ることができる。最も有名なものは西オーストラリア州のシャーク湾にある。

原初の地球環境をシミュレート

 ストロマトライト化石は、最初の生命は温暖な浅い海から生まれたという古くからの定説を裏づけているように見える。1952年にはすでに米国の微生物学者スタンリー・ミラーと、ハロルド・ユーリーが原初の地球環境をシミュレートする室内実験で、たんぱく質の構成成分となるアミノ酸に代表される有機化学物質を作り出すことに成功している。生命がこうした環境で進化した、という考え方にヒントを得た初期の研究者たちは、地球以外の天体にも生命がいる可能性について考えるようになった。相応の大きさの惑星で十分な量の大気と水を表面に保てるほどの気温がある領域、名付けて「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」、または(英国の童話で暑すぎず、寒過ぎない居場所を求めた少女ゴルディロックスの名にちなんで)「ゴルディロックスゾーン」という概念がこのときに登場した。

 ハビタブルゾーンの欠点として多くの人々が共通して指摘するのは、宇宙のあらゆる生命体が地球と同じ過程をたどって誕生すると考えるため、多少なりとも地球に近い環境でなければ生命体が出現しないと想定している点だ。現実の生化学はこれほど都合よくははこばない。制約の多いこの推論は見た目ほど万能ではなかった。たとえば生命に不可欠な複合分子、二酸化炭素を作れるのは炭素だけだし、有機化合反応を起こしやすくする理想的な溶媒は水しか考えられない。

 批判の中で最も説得力のあったのは、単にこれが時代遅れだという意見だ。太陽系の随所で行われた探査活動から、太陽からはるか離れた場所に、液体の形で大量の水が存在していることがわかってきた。さらに1970年代後半以降の地球上の発見からは、海底火山の火口や極端な酸性やアルカリ性の中、高温の地下岩石層のような明らかに過酷な場所でも、極限環境微生物は生き延びられることがわかった。いまや生物学者の中には、浅い海水よりも海底火山の火口周辺のほうが、原初細胞が誕生するのに適した環境だと信じる者もいるほどだ。もしこれが地球について当てはまるのだとしたら、この条件を他の惑星に当てはめても差し支えはないはずだ。