写真家ジョエル・サートレイの思い

 世界中の動物たちを写真に収めて、人々にその存在、大切さを伝えたい――。そんな途方もない挑戦を続けているのが、ナショナル ジオグラフィックの写真家、ジョエル・サートレイです。彼がこの「PHOTO ARK」プロジェクトを立ち上げたきっかけとなった出来事があります。

米国のサンセット動物園でワニの一種、コビトカイマンを撮影するジョエル・サートレイ(JOEL SARTORE/NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 話は2005年の感謝祭の前日にさかのぼります。その日、サートレイの奥さんは突然、がんと診断されました。サートレイは奥さんの死を恐れ、あわてました。そして、感謝すべきものをすべて取り上げられたような気持ちになりました。

 一方でサートレイは、ナショナル ジオグラフィックの写真家として世界を飛び回りながら、次第にすみかを追われ、消えていく動物たちがいることを感じていました。奥さんの治療が始まって家族のそばにいる時間が増えたこともあり、死について深く考えるようになったといいます。

 突然つきつけられた配偶者の病魔に、絶滅の危機にある動物たちの運命を重ねるのは自然なことでしょう。奥さんのいのち、サートレイ自身のいのち、撮影してきた動物たちのいのち、いずれも変わらず大切で、惜しむべきものです。

「私はこれまで一生懸命に仕事をしてきたが、それには本当に意味があったのだろうか? もし私がなんらかの行動を起こしていたら、今ごろはその成果が出ていたにちがいない。どのように保護活動を進めれば、状況を変えることができるだろう? 何をすれば、社会に関心を持ってもらえるのだろうか?」

 サートレイの頭に浮かんだのは、葬り去られようとしていたネイティブアメリカンの文化を写真で記録したエドワード・カーティスや、絶滅した鳥類の美しい画集を描き残したジョン・ジェームズ・オーデュボンでした。そして、自分が写真を撮ることで、愛する動物たちのことを人々にも知ってもらえるのではないかと思いついたそうです。

生後9週のウンピョウとたわむれるサートレイ(JOEL SARTORE/NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 こうして壮大な写真の箱舟、「PHOTO ARK」のプロジェクトがスタートしました。目標は、世界中の動物園・保護施設にいる生き物すべてである1万2000種を撮影することです。今回、その半分となる6000種まで撮り終えた成果をまとめた写真集『PHOTO ARK 動物の箱舟 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト』を発行するにあたって、サートレイからメッセージが寄せられています。

サートレイからの手紙(日本語訳)

 こうしたサートレイの思いをできるだけ多くの人々と共有し、動物たちを救うプロジェクトの輪を一緒に広げていきましょう。