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写真館で撮影された力士たちと行司。行司の男性は軍配を手にしている。(PHOTOGRAPH FROM PHELPS COLLECTION, NATIONAL GEOGRAPHIC SOCIETY ARCHIVES)

140年前のニッポン新婚旅行、貴重な写真23点

2018.06.06

 エレノア・フェルプスとハリス・フェルプスは、きっと大量の荷物を持って旅していたことだろう。衣服、洗面用具、ビザ、骨董品…。5年かけて世界旅行をすれば、物はどんどん積み上がっていくはずだ。そして彼らの場合には、1000枚を超す土産用写真もあった。

 絹や赤い革で立派に製本されたフェルプス・コレクションのアルバム27冊は、60年以上にわたり、ナショナル ジオグラフィック協会のアーカイブに保管されている。しかし、写真そのものはもっと古い。19世紀後半の数十年間に撮られており、協会が設立される1888年より前の物がほとんどだ。多くの手間と費用をかけて製本されたにもかかわらず、写真は年を経てもろくなっている。(参考記事:「100年前の写真で見る世界の婚礼衣装17選」

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フェルプス夫妻は19世紀、新婚旅行先で千点以上の土産用写真を収集した。京都の近くにあるこの社寺もその1つ。(PHOTOGRAPH FROM PHELPS COLLECTION, NATIONAL GEOGRAPHIC SOCIETY ARCHIVES)

「写真のサイズが大きくて、細部までしっかりとらえられている点が大好きです」とナショナル ジオグラフィックのアーカイブ担当者であるサラ・マンコ氏は言う。 「虫眼鏡で見れば、小さなプリントでは気付かないような発見があります」

 顔を近づけて画像を見始めると、夢中になる。「第1次世界大戦前の世界各地の写真がこれほど大量にあることは自体、貴重なことです」とマンコ氏。「一方、彼らの背後にある物語も私は大好きです。この風変わりなカップルは世界を旅しようと決めました。車も飛行機も、現代の快適な手段も全くない多くの地を踏破したのです」(参考記事:「ナショジオが撮った世界の民族衣装15選」

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コレクションをまとめたアルバムのうち3冊は、この写真のように絹で製本されている。いずれも金箔を散らした紙に日本の写真が張られている。写真には、フェルプス夫妻が旅した1880年代以前の日本の姿が収められている。PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE

 フェルプス夫妻は、自ら写真を撮っていたのではない。1878年から1883年にかけて訪れた18カ国で、土産物用の写真を収集した。つまり、写真自体は夫妻が到着する少し前、あるいは数十年前に撮影されたのかもしれないということだ。しかし、2人の存在を感じさせるものは残っている。ひとつは彼らのクセのある手書きの文字。もうひとつは、夫妻の死から数十年経って、その形見がナショナル ジオグラフィックに寄贈されるに至った、長く込み入った物語だ。

旅に出た2人

 エレノア・リビングストン・ペルは、ニューヨークの上流社会の一員で、裕福な旧家の美しい娘だった。チャールズ・ハリス・フェルプスはボストンの弁護士で、ピューリタンの家系だったが経済的には楽ではなかった。タイムズ=ピカユーン紙によると、1869年、彼は一財産築こうとニューヨークにやって来た。「『金持ちと結婚する。そうでなければ、誰とも結婚しない』と豪語していた」という。9年後、彼はエレノアと出会った。

 乗馬を楽しんだ二人は、1878年の初冬のある日、馬で駆け落ちした。ハリスは32歳、エレノアは20歳だった。

 エレノアの両親は感心しなかった。父親は彼女の相続権を奪うと脅した。正式に結婚し直すことに若いカップルが同意したため、一時は譲歩したが、ハリスがエレノアを連れて世界旅行に出てしまうと、ペル夫妻は再び憤った。

 

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