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家畜を大量死させる「ゾド」と、モンゴル遊牧民の厳しい生活 写真17点

2018.05.07
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 この冬、過去10年で2度目となる気象災害がモンゴルのステップ地帯を襲い、伝統的な遊牧コミュニティの生活を支えるヒツジ、ヤギ、ウシ、ラクダを大量に死滅させた。

 長く続く干ばつにより、ロシアとの国境に近いモンゴル北部の草原では、遊牧民が家畜を養えるだけの十分な草がなく、動物たちは例年よりもはるかに痩せた状態で冬に突入した。不作の夏の後に厳しい冬が続けば、家畜は蓄えた脂肪を短期間で燃焼してしまい、遊牧民は予備の干し草に例年より何カ月も早く手をつけることになる。

 今年1月、ステップの気温は平均より5℃以上低い氷点下50℃まで下がり、その結果、70万頭の動物が命を落とした。(参考記事:「マイナス40℃の町で人々はどう暮らしているのか? 写真11点」

遊牧民の家の外にひしめく家畜。(Photograph by Katie Orlinsky)
丘の斜面に列を作るヤギ。(Photograph by Katie Orlinsky)

 大量の家畜の命を奪う厳しい冬は、モンゴルでは珍しいものではなく、地元にはこれを表すための「ゾド」という呼び名が存在するほどだ。現在、遊牧民の間では、ゾドが以前より頻繁に起こるようになっており、事態はさらに悪化を続けているという見方が大勢を占めている。

 カトリック系救援団体「カリタス」の広報官、パトリック・ニコルソン氏は今年1月、モンゴル・オブス県の人々から、今回のゾドについての話を聞いている。ニコルソン氏によると、地元の知事であるバトジャルガル氏は、過放牧と気候の変化が災いしたと考えているという。

「かつては四季がありましたが、いまでは季節は3つしかありません」とバトジャルガル氏は言う。「以前は6月から8月が暖かく、雨が降りました。さまざまな種類の草が育ち、動物たちは太りました。今では雨が降らず、風が草をすっかり乾かしてしまいます」

オブス県の県都オラーンゴム。(Photograph by Katie Orlinsky)

 こうした気象は家畜のみならず、遊牧民の暮らし方も脅かす。食べ物と収入の源である動物を奪われたことで、何万人もの遊牧民が、子供たちを学校に通わせ、職を見つけるために首都ウランバートルに流れ込んでいる。(参考記事:「ロシア極北、トナカイ遊牧民の暮らしが危ない」

 解決策は一筋縄では見つからない。米メイン大学で気象を研究しているブラッドフィールド・ライアン氏は、ゾドは予測が困難で、それはこの現象を引き起こす条件を特定するのが難しいためだと語る。

「決まった気象パターンを特定して、ああ、これはゾドが来るなと言えるわけではありません。長期の気象予測モデルを用いても、そうした現象がどのくらい継続するかを把握するのは困難です。大気のパターンのバリエーションが多すぎるのです」

【ギャラリー】モンゴル遊牧民の暮らし 写真17点(画像クリックでギャラリーページへ)
オブス県の家で家族と一緒に暮らす女の子。(Photograph by Katie Orlinsky)

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