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気仙沼の漁師、冬の海に生きる 写真10点

2017.12.05
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写真家、竹沢うるま氏が宮城県気仙沼の冬の海で、地元の漁師たちを撮影した。

 これまで145カ国ほどの国と地域を旅した。その先々で私が求めていたのは、大地の一部として生きる人々の姿である。4000メートル級の山々を越え、凍った川を遡り、馬で荒野を行き、その果てに生きる人々を撮影してきた。

 これまで日本でそういった人々を撮影する機会がほとんどなかったのだが、今回、宮城県気仙沼の漁師を撮影した。訪れたのは冬。荒れる海、吹きすさぶ寒風、視界を覆う雪。そのなかで生きる漁師。そんな姿を撮りたいと思ったのだ。過酷な自然環境であればあるほど、そこに生きる人々の表情に本質的なものが表れると経験的に感じている。

(Photograph by Uruma Takezawa)

 サヨリ漁、タラ漁やワカメや牡蠣の養殖などの船に乗せてもらい、撮影をした。冷たい風が身を切る中、漁師たちは淡々と作業を続ける。決して大きな態度は取らず、自然に対して謙虚で、小難しいことも口にしない。生命の恵みを与えてくれる海、そしてすべてを奪う海。そのふたつを常に身近に感じているからこそ、その言動や姿は、単純にして本質であるように感じられた。寡黙なその姿は無言のうちに、「おまえはいま、生きているか」とこちらに向かって問いかけているかのようであった。

 気仙沼の漁師たちの表情をファインダー越しに捉えていると、不思議な気持ちになった。ふとした時に表れる控えめな笑顔、水平線の彼方を見つめるときのコクのある瞳、過ごしてきた海上での人生の密度を雄弁に物語る深い皺。その一つひとつが、これまで世界各地を旅して出会ってきた“生きる”人々の姿に重なるのである。

(Photograph by Uruma Takezawa)

 かつて、3年近く“生きる”人々を求めて世界各地を旅したことがある。険しい山々に囲まれたパミール高原で暮らす遊牧民たちの顔に浮かぶ穏やかな表情、木造の帆船でインド洋から押し寄せる荒波に向かって漕ぎ出すマダガスカルの漁民たちのごつごつとした力強い手、アマゾンの奥地で精霊とともに生きる部族の長老のしわがれた声。気仙沼の漁師たちと接していると、普段は深く沈んでいるそれらの記憶が頭のなかで蘇るときがあった。それはきっと、旅路で感じてきた“生きる”人々が放つ特有のエネルギーと同じようなものを、気仙沼の漁師たちの姿から感じたからかもしれない。

(Photograph by Uruma Takezawa)

「人が本当の意味で大地と繋がり生きる瞬間、大地は躍動し、人は輝き始める」

 長い旅を終えたとき、ふとそんな言葉を口にしたことがある。その言葉を、気仙沼の漁師が操船する船の上で思い出した。

 気仙沼での撮影は、新鮮であり、また懐かしくもあった。


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写真・文=竹沢うるま

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