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サーカス用に、自宅裏の駐車場で火を吐く練習をするアーロン・ウォリンさん。「40年後には伝説になっていたい。みんなに私のことを話題にしてほしいのです」(PHOTOGRAPH BY BRIAN LEHMANN)

上半身だけで生きる男、タフに突き進む日常に密着 写真20点

2017.09.21
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 アーロン・ウォリンさんには2つの顔がある。舞台上では、世界で最も背の低い命知らず、その名も「ショート・E・デンジャラスリー」として、観衆を熱狂させるエキスパートだ。転がるボウリング球の上でバランスを取り、ナイフを投げ、火のように熱いガラスの上を両手で歩いて見せる。「ステージで得られる高揚感は理屈抜き。原始的な感覚です」とウォリンさんは話す。「エネルギーの大きな塊が2つ、互いにぶつかっている感じです」

 しかし、いったん舞台を降りてカウボーイハットを脱ぐと、本当の姿に戻る。「誰でもオン・オフを切り替えるボタンが必要です」と彼は言う。「2つの人格は切り離すことができなければいけません。そうじゃないと、おかしなことになります」。ウォリンさんは2歳半のとき、仙骨形成不全という病気のため両脚を切断した。20年前からショービジネスを仕事とし、この5年は「ヘルザポッピン・サーカス・サイドショー・レビュー」の一員として、移動しながらショーを披露している。「多くの人にとっては夢でしかない、刺激的な生き方をしていますよ」(参考記事:「ベトナムの古参サーカス団、舞台裏の表情」

芸名「ショート・E・デンジャラスリー」を名乗り、観衆を沸かせるアーロン・ウォリンさん。転がるボウリング球に乗ってバランスを取る。各地を回る「ヘルザポッピン・サーカス・サイドショー」での一幕。(PHOTOGRAPH BY BRIAN LEHMANN)
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 写真家のブライアン・リーマン氏の心を最初にとらえたのは、「ショーティー」としてのキャラクターだった。だが、リーマン氏が2年にわたって断続的に彼を追いかけるに至ったのは、舞台を降りたときの人柄が理由だ。「見た目が興味をそそる男です」とリーマン氏は言う。「でも、一緒にいるのが楽しくなければ、彼を撮影し続けようとは思わなかったでしょう」。ウォリンさんは自身の生活にリーマン氏を自由に入らせ、2人はいい友人になった。「彼は私の本当の姿をつかんでくれました」とウォリンさんは言う。「私は何も隠しませんでしたから」

 その結果、驚異的な男の姿を極めて至近距離からとらえた写真が出来上がった。「彼の日常生活を見せることが大事だと思っています。それがこの話の核心だからです」とリーマン氏は話す。「私やあなたがしていることは何でも、彼もやっています。掃除機をかけるのも、スケートボードも、犬の散歩も」

アーロン・ウォリンさんは、2歳半のときに病気で両脚と下半身を失った。身長170センチの人向けに作られた世界で、その半分の背丈のウォリンさんは自力で生きる方法を学ばざるを得なかった。ウォリンさんによると、最もいらいらするのは「カウンターにいる店員が気付かないとき」だという。(PHOTOGRAPH BY BRIAN LEHMANN)
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 ウォリンさんは自身の少年時代を「ちょっとややこしかった」と表現する。しかし両親は、ウォリンさんが自分を哀れに思うようには育てなかったと言う。ウォリンさんの母が12年前に亡くなったことは、自分自身を理解する上で大きな転機となった。「まさにアラームが鳴って目が覚めたようでした。私は人生で何が大切かを理解し、それ以外のことはどうでもいいと思いました」(参考記事:「胸に刺さる、「助けの必要性」を訴える写真12点」

 ウォリンさんの人生観からは学ぶことが多いとリーマン氏は考えている。「『ショーティー』は家でじっとして自分を気の毒がったりはせず、それどころか前に突き進んでいる素晴らしい例です。誰もがすべき生き方をしているのです」

食料品をしまうウォリンさん。高いところに届くよう、小さなベンチを滑らせて台所の中を移動する。(PHOTOGRAPH BY BRIAN LEHMANN)
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 ウォリンさんは女性からの人気も高く、かつてショーの後に女の子から24本のバラの花をもらったことがある。一方、あまりうれしくない反応が来ることもある。「ありがたくない関心を向けられることはあります。でも、そういう人は単に無知か、私に関して間違った憶測をしているだけです」とウォリンさんは言う。公の場で近付いて来てお金を恵もうとしたり、立ち入った質問をしたりする人もいる。「彼らは私を、自分たちとは違うと思い込んでいます」。だがリーマン氏によれば、そうした出来事はごくまれだそうだ。「本人が満面の笑顔で幸せそうにしているのに、それを不快な事態にするのは難しいですから」

 ウォリンさんは今年の12月で40歳になる。強烈なくらいアクティブな生き方は関節と筋肉に負担をかけ続けているが、仕事のペースを落とす様子はない。「この仕事が大好きです」と彼は言う。「ブライス(ヘルザポッピンのオーナー)とよく冗談を言うんですよ。引退するのは舞台から落ちて死んだ時だと」(参考記事:「世界で最も弾圧されている民族ロヒンギャ」

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