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サリーに身を包み、家族とともに近くの寺院から戻ってきたシャイラフちゃん(本人たちの希望で、下の名前のみを掲載する)。イスラエル人の4人姉妹の末っ子だ。姉妹は4人とも、学校へ通っていない。正式な教育プログラムに属さないこのような教育方針を「アンスクーリング」と呼ぶ。(PHOTOGRAPH BY NEHA HIRVE)

砂漠を森に再生させる生活共同体、素朴な環境で自らにも向き合う

2017.08.25

 電力網に頼らず、砂漠に命を取り戻し、自らをも癒やす人々がいる。インド南部のタミル・ナードゥ州にある、「サダナ・フォレスト」と呼ばれる共同体だ。自家発電による電気だけを使い、約100人が生活している。

「ジャングルは子宮です。熱帯の空気は温かい蜂蜜のようにべとつき、耳の中を満たすと、外の世界の音は遠のいて行きます。人々は、世界中からここへやってきます。普通の生活だけでは物足りなくなった人々が」

 そう語るのは、ストックホルムを拠点に活動する写真家、ニーハ・ヒルベ氏だ。ヒルベ氏はここに2カ月間滞在し、彼らの暮らしぶりを写真に記録した。

 ここにはかつて豊かな乾燥熱帯林が広がっていたが、18~20世紀にヨーロッパ人が入植し、木を切り倒して町を作った。その結果、土地は砂漠のような姿に変わり果てた。1960年代に建設されたオーロビルと呼ばれる町の中に、さらに小さな共同体サダナ・フォレストが創立されたのは2003年のこと。創立者のアビラム氏は、森林を再生させて土地を育てるという使命を胸にイスラエルからやってきた。2015年以降、世界中から集まったボランティアの手によって3万本以上の木が植樹された。

菜園でカメラに向かうベルナルドさん。彼は1994年からパートナーとともに、労働者を雇ったり新しい土や有機肥料を使ったりすることなく、3ヘクタール余りの土地を再生してきた。外部の助けはほとんど借りていない。(PHOTOGRAPH BY NEHA HIRVE)
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 そして森もまた、人々に与えてくれる。ヒルベ氏も撮影中、同じように感じたという。

「ボランティアの多くは、何らかの個人的な事情を抱えています。土地とつながった素朴な環境の中に身を置くことで、自らが直面する問題と向き合う場所が与えられるのです」(参考記事:「森の生活共同体、平等を重んじるのどかな楽園 写真17点」

ゆっくりと流れる時間

 ヒルベ氏がオーロビルについて知ったのは、ミッドスウェーデン大学で修士論文のために調べものをしていた時のことだった。そして2017年の初めに、インドへ向かった。

 都会の人間であり、速度を落とすのが苦手と自認するヒルベ氏だが、共同体のゆったりとしたペースに合わせ、完成品にこだわるよりもむしろ、今を撮影する過程を信じることを学んだ。

 電力網にたよらず、完全菜食主義の食事(ビーガン食)をとるという、初めて経験する生活にもすぐに慣れてしまった自分に、ヒルベ氏は驚いた。ある日、太陽光が十分に得られなかったため、ヒルベ氏は自転車をこいで発電し、その後ろに接続したブレンダーを動かして、40人分のチャツネをつくったことがあった。

「時間がかかりました。1時間半くらいでしょうか。一度にごくわずかの量しか作れないので、小分けにしなければなりませんでした」と、ヒルベ氏は笑いながら話す。

森の中で瞑想するエレナさん。(PHOTOGRAPH BY NEHA HIRVE)
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他の木に巻き付くバニヤンの若木。(PHOTOGRAPH BY NEHA HIRVE)
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「私も共同体に参加し、住人たちのやっていることをやりました。料理、掃除、森林再生を手伝いました。おかげで彼らは、外部からやってきた写真家としてよりも、むしろ自分たちの一員として私に接してくれました」(参考記事:「森の教えにしたがい暮らす、小さな生活共同体 写真14点」

自然な解決法

 ヒルベ氏がとらえた数々の魅力あふれる瞬間の中に、地面に膝をついて植樹用の穴に頭を突っ込んでいる男性の写真がある。

 彼の服の色調と模様が周囲に生えている植物のトーンや配置と調和し、「人々を外の世界から守り、包み込んでくれる森を表しているようです」と、ヒルベ氏は語る。

新しい苗木を植えるための穴を掘る。2003年から、サダナのボランティアたちはこの地の熱帯乾燥常緑林を再生する活動を続けている。(PHOTOGRAPH BY NEHA HIRVE)
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 撮影中、ハプニングも起こった。ある時、気温があまりに上がりすぎたので、ヒルベ氏はカメラフィルムがだめになってしまうのではないかと不安になった。サダナ・フォレストには冷蔵庫がないので、近くの村まで出かけて、アイスクリーム屋の冷蔵庫にフィルムを保管させてもらったという。

 ヒルベ氏は、サダナ・フォレストの記録を「Full Shade / Half Sun」と題した連作にまとめた。この作品は、あまり知られていないオーロビルとサダナ・フォレストの物語を世界へ伝えることを目指している。そして、大地とつながった生活について考えてみるよう人々を促す。

「地球上ではさまざまな環境変化が起こっており、従来にはない新しい解決策が必要とされています」(参考記事:「27年一度も人と接触せず、ある森の「隠者」の真相」

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