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ステファニー・シンクレア氏と夫のブライアン・ホーベン氏が2人の子どもを養子に迎えた日。(PHOTOGRAPH BY NICOLE CHAN)

アルビノ取材が写真家の人生を変えた

2017.06.02
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アルビノを取材していた写真家のステファニー・シンクレア氏とその夫が、中国からアルビノの子どもたちを養子に迎える決断をした。(参考記事:写真家ステファニー・シンクレアのプロフィールと担当作品

 ナショナル ジオグラフィックの写真家として世界を旅する私は、この外見のおかげで訪問する国によっては目立ってしまうことが多い。重さ18キロのカメラ機材を担いで歩く肌の白い金髪外国人女性を、人々はじろじろと眺める。今ではそんな視線にすっかり慣れてしまって、気になることもほとんどない。しかし2017年2月、夫のブライアンとともに2人の子どもたちを養子として迎えるため中国へ旅したときに浴びた視線は、これまで経験したことがないほど強烈なものだった。

血はつながっていないが、フォレスト(7歳)とロータス(3歳)は特別な絆で結ばれ、普通の兄妹と変わらない関係を築いている。私たちの家族は、血縁関係ではなく、愛情によって結ばれている。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE SINCLAIR)
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 7歳のフォレストと3歳のロータスは、2人ともアルビノ(先天性白皮症)だ。生後すぐに捨てられ、政府が経営する孤児院に引き取られた。中国では、社会的・経済的に大変な負担を強いられるとされているアルビノの子どもを捨ててしまうことは珍しくない。

 陶器のように透き通る肌と真っ白い髪をした子どもたちが目に入ると、道行く人々は思わず足を止めて振り返る。広州の動物園でキリンを見るフォレストと、すぐそばのベビーカーで眠っているロータスに、知らない人が立ち止まってカメラを向ける。公園でもショッピングモールでもレストランでも、同じような好奇の目にさらされた。ほとんどの人は私たち親子を見て、血のつながった普通の米国人家族が旅行していると思い込むらしく、子どもたちが流ちょうな中国語を話し出すとびっくりする。

地元のお祭りで、スパイダーマンのフェイスペイントを描いてもらったフォレスト。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE SINCLAIR)
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 世界には、どんな形であれ子どもが障害を持って生まれてくると、家族に不幸が降りかかると信じられている地域が多く存在する。アルビノの人々は、学校で仲間外れにされ、仕事にも就けず、結婚もできず、ひどいケースになると動物のように狩りの対象にされるところまである。

 私はアルビニズムを取材する長期プロジェクトに携わったことがきっかけで、アルビニズムとは何かを知り、アルビノが直面する危険について知るようになった。最終的に、このプロジェクトはナショナル ジオグラフィック誌に掲載されることになる。アルビニズムは、肌や毛髪、目の色素が欠乏する遺伝子疾患で、弱視や皮膚損傷などのリスクが高まるだけでなく、差別や偏見の対象になることもある。

 ナショナル ジオグラフィック2017年6月号の特集『白い肌に生まれて』の取材で、大らかで優しく、才能あふれるアルビノの人々に会う機会があった。ちょうど同じころ、私と夫は外国から養子を迎える手続きを進めており、まるで当然のように、アルビノの子どもたちを探し始めていた。

午後の光の中で眠るロータス。2人とも光に敏感だが、自然光よりも天井からの蛍光灯の光に弱い。(PHOTOGRAPH BY BRYAN HOBEN)
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 2016年4月、米メリーランド州にある養子縁組の仲介会社「クレイドル・オブ・ホープ」を通してロータスを紹介された。そして折よく、同社は6月に中国から20人の子どもたちを米国へ呼び寄せ、米国人家族の家に滞在させるという企画を立てており、私たち夫婦にも6歳になる男の子のホストファミリーにならないかと打診してきた。その子もまた、アルビノだという。中国語の詩を暗唱しているビデオを見せてもらった私たちは、すぐにフォレストのとりこになった。

 ホームステイの期間が終わり、中国へ戻る飛行機にフォレストを乗せなければならなかったことは、ブライアンと私にとって最もつらい経験のひとつだった。けれども、クレイドル・オブ・ホープはフォレストの養子縁組をできるだけ早く進め、ロータスとフォレストを一緒に米国へ連れ帰ることができるよう努力すると約束してくれた。

 2人を見た多くの人は、フォレストとロータスが実の兄妹だと思い込む。時には、双子に間違えられることもある。いつもは普通の兄妹と同じように、告げ口をしたり物を取り合ったりしてけんかも絶えないが、いつの日か、孤児院で育ったこと、中国人としてのルーツ、養子縁組、そしてアルビニズムという特殊な背景を理解してくれる家族として、互いの存在を心強く思うときが来るだろう。

中国を訪問中、多くの嬉し涙が流された。私たちの家族は、こうして完成した。(PHOTOGRAPH BY NICOLE CHAN)
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 多くのアルビノと同様、私たちの子どもたちも視力が弱いが、毎日の生活に慣れていくと、ついそのような障害があることを忘れがちだ。私たちは、一緒に遊んだり泳いだり、普通の家族とほとんど同じような活動に参加している。違うのは、子どもたちの肌を守るためにいつでも大量の日焼け止めクリームとつば付きの帽子を準備しておくことくらいだ。本人たちも、弱視の生活にすっかり慣れっこになっており、遊び場で危険な場所を確認させるのを忘れてしまうこともある。つい最近、ロータスは雲梯(うんてい)の低い部分に正面から頭をぶつけ、額に大きなたんこぶを作ってしまった。白い肌にできたあざは、よく目立つ。だがそれ以外は、同じ年齢の子どもたちと変わるところはない。

 私たちが直面した最大の障害は、アルビニズムよりも、勉強や社会性の面で同級生たちに追いつかなければならないということだった。周囲の子どもたちのほとんどは、幼いころ施設で育った経験がない。障害のある子を持つ親なら誰でもわかることだが、教育委員会を相手に子どもの権利を訴えることは、育児と同じくらいの忍耐と粘り強さを要する。

中国の広州で散髪するフォレスト(7歳)とロータス(3歳)。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE SINCLAIR)
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 子どものいなかった夫婦が、突然2人の子どもの親になると、責任の重さに圧倒されそうになることがある。私と夫は、親業という深みにただひょいと飛び込んだのではなく、宇宙の果てから放たれて突っ込んで来たのだと冗談を言うことがある。けれども、アルビノの人々が集まる絆の固いコミュニティから、たくさんの助けをいただいた。また当事者団体を通して、近くに住む似たような境遇の2家族と会うことができた。彼らもまた、我が家と同年代のアルビノの子どもたちを中国から養子に迎えていた。

 アルビノは1万7000人に1人と言われているが、こうしたつながりを持つことが、自分だけではないのだということを子どもたちに教えてくれる。2家族のうち1家族と初めて対面した時、女の子たちはロータスを見てパッと顔を輝かせ、「この子の髪も白いよ。私たちみたい」と叫んだ。男の子が、フォレストに中国語で「こんにちは」というと、フォレストは思わず高い声で笑い、男の子の手を取った。

今では正式に両親となった2人にカメラを向けるフォレスト。2016年の夏、フォレストは3週間我が家に滞在した。養子縁組手続きが完了するまでのしばしの別れは、私たち全員にとってつらいことだったが、その分再会が特別なものになった。(PHOTOGRAPH BY NICOLE CHAN)
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 幸いにも、フォレストとロータスはまだ、アルビノが拒絶される社会もあるという事実を知らない。そればかりか、自分たちは魅力的な人間だと思っている。もちろん、そう思うのは正しいことなのだ。どんな子どもでも施設で育つべきではないが、アルビノを残酷に扱う社会とは無縁の場所で、献身的に働く施設の人々から愛情たっぷりに育ててもらっていたことは、2人を見ればよくわかる。時々、誰に言われるともなく、フォレストは雪のように白い自分の髪を指さして得意そうに「きれい」ということがある。

 米国の学校へも、大した問題もなく溶け込むことができた。これくらいの年齢の子どもたちはまだ、違いを受け入れ、互いにやさしく接するということもあるだろう。しかし他の親や養子縁組のセラピストからは、年齢が上がるにつれて、心が傷つく経験をするようになると警告された。そんな時、自分と同じような外見を持った友人や兄弟の存在がとりわけ大切になってくるという。

 ナショナル ジオグラフィック誌の6月号が我が家の郵便受けに届くと、フォレストは掲載された写真を食い入るように見つめ、1人ひとりを指差して「僕の友だち」と言った。

昨年夏に我が家に滞在したフォレスト。風船を放したくなくて、手に持ったまま眠りに落ちた。(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE SINCLAIR)
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 これまで世界中を旅して多くのことを学んだが、そのなかで、人それぞれ違うというのは歓迎すべきことなのだと気付いた。多様性は、豊かな社会構造を築くために重要な要素となる。ブライアンと私は、心から愛する我が子たちが、アルビノだからという理由であれ、その他どんなばかげた理由であれ、差別にあわないことを願っている。子どもたちの世界が広がるにつれて、自分の状態を前向きにとらえ、これがあるから自分は特別なのだと自信を持てるものを多く見つけてもらいたい。そして、世界を旅するようになり、それがタンザニア、パナマ、自分たちの祖国である中国、どこであろうとも、白い肌や白い髪ではなく、彼らの持つ美しい心が人々の注目を集めるような人間になってほしい。

ナショナル ジオグラフィック日本版2017年6月号

 写真家ステファニー・シンクレアが担当した22ページの特集『白い肌に生まれて』を収録しています。

文=Stephanie Sinclair/訳=ルーバー荒井ハンナ

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