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砂に埋もれるニューヨーク市の地下鉄車両。ローリ・ニックスとキャサリン・ガーバーが7カ月かけて仕上げたミニチュアだ。壁のポスターは色あせ、遠くに高層ビル群が見える。(Miniature and Photography by Lori Nix and Kathleen Gerber)

誰もいない世界、精緻なミニチュア廃墟7点

2017.03.29
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人類がいなくなったら、私たちが暮らしている街はどうなるのだろう。二人の女性アーティストが「この世の終わり」をミニチュアで表現する。(この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2017年4月号に掲載されたものです)

 廃墟となった都市……列車が動くことなく線路に居座り、学校は静まり返る。図書館や美容院は放置されて荒れるがままだ。そこに人間の姿はない。

 それはまさに“この世の終わり”。この恐ろしい光景を作り出したのは、ニューヨーク市在住のローリ・ニックスとキャサリン・ガーバーだ。

竜巻にでも襲われたのか、めちゃくちゃに壊れた美容院の店内。そこに、椅子の置き場所を変えようと、ガーバーの手が入ってきた。(Miniature and Photography by Lori Nix and Kathleen Gerber)
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 目的は何か? ニックスによると、「未知の大惨事に見舞われて、人類がいなくなった大都市の姿という、誰も結末を知らない物語」を作り出して、写真に収めることだという。ミニチュアを見た人たちに、「想像力を働かせて、現在を見つめ直してほしいんです。私たちに未来はあるのか? 自分たちを救うことはできるのか? とね」

 どのようなミニチュアを作るか、ニックスは地下鉄に乗っているときや旅行雑誌をめくっているときに思いつくことが多いという。ほかには、竜巻などの自然災害が多い米国カンザス州の故郷で過ごした日々がヒントとなることもある。

 ニックスは自分を、「一種の風景写真家」だと考えている。しかし、「風景を探してあちこち歩き回るのではなくて、テーブルの上に思い通りの風景を作るんです」と彼女は話す。

 ガーバーの出番はここから。めっき加工やガラス制作、特殊塗装の経験を生かし、組み立てや、傷や汚れをつける作業などを担当する。

中華料理のテイクアウト・ショップ。大惨事に見舞われて荒廃した街の情景は、発泡スチロールや粘土、紙、枯れ草などで作られたものだ。「私たちの写真を見た人は、『これって本物の廃墟なの?』と聞いてきます」とニックスは言う。「そう思ってもらえたら、その作品は成功です。私たちは、できる限りリアルな風景を目指しています。色や縮尺に微妙なずれはあるかもしれませんが、常にリアリティーを追求しています」(Miniature and Photography by Lori Nix and Kathleen Gerber)
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 ミニチュアの大きさは、幅が50センチから3メートルまでとさまざま。素材はどこででも手に入る、紙やアクリル絵の具、ボール紙、粘土、発泡スチロール、プラスチック板といったものだ。作り上げるのに早くて7カ月、大作になると15カ月かかることもある。完成すると、ニックスが大判カメラで撮影。納得のいく写真になるまで3週間撮り続けることもあるという。

「作品からは想像できないかもしれませんが、私はとても楽観的なんです。私たちは人工的な場所が自然に返っていく様子を表現しています。そこには不思議な希望があると思うんです」とニックスが言うと、ガーバーはこう続けた。「私たちの作品にはいつも、おかしさと恐ろしさが混在しています。見る人を引きずり込んで、考えてもらいたいんです」

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ナショナル ジオグラフィック日本版2017年4月号

 ミニチュア廃墟の記事「誰もいない世界」を収録。大木の生えた図書館など、誌面では別の作品も見られます! その他、テクノロジーで加速する人類の進化や、アフリカのゲラダヒヒの記事を掲載しています。

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