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オーストリアのアイスクーゲル氷穴。氷の巨大さに、脇に立つ探検家が小さく見える。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

ナショジオ写真家による美しい洞窟写真9点とその撮り方

2017.03.01
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「暗闇に惹かれるんです」

 17年間にわたり世界中の洞窟の撮影を続けている写真家のロビー・ショーン氏は語る。最初は趣味でケイビング(洞窟探検)を楽しんでいたが、いつしか地下世界の虜になっていた。今回、ナショナル ジオグラフィック誌2017年3月号で「ウズベキスタン 底知れない洞窟へ」特集の撮影を担当した。(参考記事:「ウズベキスタン 底知れない洞窟へ」

細いロープにぶら下がった人影が、ヘッドランプの光の先に浮かぶ。そのあまりの小ささが、中国、泉口洞の空間の巨大さを物語る。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE)
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 洞窟探検の経験に加えて、彼が力を注いでいるのは、暗い洞窟をいかに照らし出すか。効果的に照明を当てようという試行錯誤が、ショーン氏の撮影技術に磨きをかけている。「カメラを絞り優先にして自然光を使うだけの撮影には、あまり興味が持てないのです」

 どうやって暗闇で魔法のような写真を撮るのか、ショーン氏に聞いた。(参考記事:「ドローンで空撮、巨大洞窟の鳥肌ものの地下世界」

英国、ダービーシャー州キャッストンにある天然の縦穴を降りていく人。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE)
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まずは探検技術、写真はその次

 洞窟写真家には危険がつきものだ。洞窟内を進むのは体力を使うし、厳しい寒さや湿気にもさらされる。

「写真を撮ることを考える前に、まずは洞窟探検について熟知することが大事。そうでないと機材をダメにするばかりか、最悪、自分が怪我をしてしまいます」

 洞窟の中に降りていくのはある意味、山を逆さに登るようなものだ。ショーン氏は過去に高層ビルの窓拭きなどロープにぶら下がって仕事をした経験があり、命綱を使って高所作業をするのが得意になったという。

スイス、ツェルマットのゴルナーグラート山腹に氷河がぶつかってできた洞窟。イタリア人雪氷学者のニッコロ・セグレト氏が青い氷の彫刻を見上げる。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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トレ・リヴェッリ洞窟は、イタリアのシチリア島にそびえるエトナ山最長の溶岩洞。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 ショーン氏は、身に着けているハーネス(安全帯)にフックで繋げたカメラと三脚を使って撮影を行う。「昔の経験のおかげで、私は天井から200メートル、地面から200メートルという中空にロープでぶらさがったまま、不安なくバッグからカメラを取り出すことができるのです」

 狭い洞窟もあれば、サッカー場がいくつも並ぶほど広い洞窟もあるので、カメラのレンズは柔軟なものがよい。「長年の経験から、広角で撮るほど良い結果が得られると考えています。しかし洞窟が非常に狭い場合には、ズームレンズだと良い画角が得られます」

暗闇に光を当てる

 現場に到着したとき、ショーン氏がまずやるのは洞窟を奥まで進んでみることだ。これは1時間で済むこともあれば、数日かかることもある。

 撮影場所を決めたら、ヘルメットを脱ぐ。そうすれば、目のすぐ上で光っていたヘッドランプを、今度は側面からの光源として使えるようになる。「私は洞窟自体と、そこで私が作り出せる影をいろいろ検討してみます」。目を闇に慣らしながら、ショーン氏はその空間とそれを撮影するベストな方法をあれこれと思い浮かべてみる。

スイス、アレッチ氷河の穴に降りていく探検家。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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マレーシア、ボルネオ島のクリアウォーター洞窟。波打つ岩壁は、この通路に急流が流れていたことを物語る。クリアウォーター洞窟は世界で8番目に長い洞窟。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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「フラッシュやストロボとその配置について、自分がどうしたいのかを決めなくてはなりません」

 撮影に出発する前、ショーン氏は機材を広げて、すべてが間違いなく使える状態になっているかを確認する。現場でひと通りの機材をセットし、何を撮りたいかをしっかりと思い描いてから、撮影を開始する。

「ライティングには幾通りかやり方があります」。ひとつは、遠隔操作で複数のフラッシュを一度に発光させる方法。「デジタル技術のおかげで、カメラ本体にフラッシュを付けることの欠点が見えてきました。そこでよりおもしろい写真にするために、フラッシュを移動させるわけです」

 あるいは、1回につきひとつの光源を発光させて撮影し、複数のコマを重ねて最終的な1枚を仕上げることもある。

アシスタントを大切に

「洞窟に入るときには、全員が一丸となってあらゆる困難に立ち向かわなくてはなりません。撮影のときも、調査をするときも、探検をするときもです」。そこで重要なのが作業を手伝ってくれるチームの存在だ。チームは自分ともう1人という場合もあれば、15人ほどのときもある。

スイス、アレッチ氷河の穴に降りていく探検家。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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フランス、ベルジェ洞窟の奥深くにあるカドゥ湖を渡る探検家。ボートの下に取り付けられた強力な照明が、湖水と洞窟の壁を明るく照らす。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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「アシスタントはこちらの撮影を手伝うために多くの時間を割いています。寒い中で1~2時間立ちっぱなしということもしょっちゅうです。彼らが照明を正しい位置に掲げていてくれるのです」

「撮影旅行の終わりには、私はパブに行って全員に一杯おごるようにしています。もしみんなが後日、写真のプリントが欲しいと言ってくれたら、本当にうれしいですね。それはつまり、彼らが次の機会にもぜひとも集まって手を貸そうという気になってくれているということですから。彼らは私の撮影旅行に同行すればきっと何か得るものがあり、また私自身が撮影から何かを得るだろうということを期待してくれているのです」(参考記事:「中国 巨岩の帝国」

ナショナル ジオグラフィック日本版2017年3月号

 写真家ロビー・ショーン氏が撮影した特集「ウズベキスタン 底知れない洞窟」を収録。その他、北欧のバイキングの物語や、メガシティーの記事を掲載しています。

書籍『ナショジオが行ってみた 究極の洞窟』

 巨大洞窟、結晶洞窟、水中洞窟・・・みたこともない“地底旅行”へ

文=Nicole Werbeck、写真=Robbie Shone/訳=北村京子

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