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ビニール袋の中で氷上釣りをする人々10点

2017.02.03
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中央アジアのカザフスタンでは、凍った川でビニール袋をかぶって釣りをする、ちょっと不思議な光景が見られる。

 カザフスタンはかつて、牧歌的でのどかな国だった。旧ソ連のフルシチョフ元書記長の言葉を借りれば、その大半は「処女地」であった。

 1991年にソ連から独立すると、この国はぎごちないながらも変わり始めた。なかでも目覚ましい変貌をとげたのが、首都のアスタナだ。まるで中東の産油国さながらに、この都市はオイルマネーの恩恵を受けて文化・技術・経済の中心地へと発展した。

(Photograph by Aleksey Kondratyev)
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 一方で、高層のオフィスビルや多国籍の富豪たちの陰に隠れて、石油の恩恵にあずかれない人々もいる。隣の国キルギスで生まれた写真家アレクセイ・コンドラチェフ氏は、洗練されたこのアスタナの町に、若々しい情熱と古い世界の伝統という、強烈なコントラストを見出した。カザフスタンの変化、さらにはアスタナの変化を記録したいと考えた。

 アスタナは、モンゴルの首都ウランバートルに次ぎ、世界で2番目に寒い首都とも言われる。この町で写真家が注目したのが、氷上で魚を釣る人たちの奇妙な習慣だった。

 アスタナの町を流れるエシム川では、スズキやコイの仲間を狙う人たちが氷に穴を開け、1日中糸を垂れている。彼らは、マイナス30℃にもなる寒風から身を守るため、ビニール袋をかぶって釣りをしているのだ。使っているのは、捨てられた米袋や食料品店の袋といった拾い物。風よけになるだけでなく、自分の吐く息のおかげで暖かい。

(Photograph by Aleksey Kondratyev)
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 撮影に際し、コンドラチェフ氏はテントまで歩いてビニール袋をノックした。ビニールに触れただけで、中の人が飛び上がるほど驚くこともあった。大半の人は、顔がはっきりと写る写真を撮るのだと勘違いして撮影をいやがったが、自分が写したいのはビニールのテントだと話すと、釣り人たちはおかしなことをするものだと言いながらも、撮影を許可してくれた。

 コンドラチェフ氏が見たところ、釣り人の多くは高齢で、何十年も釣りを続けてきたような雰囲気があった。彼らがここにいるのは魚を釣るためだが、氷の上にしゃがんだその姿は、ある種の瞑想のようで、静かで孤独な時が流れているように感じられた。

 写真家のレンズを通して見た釣り人とビニール袋は、また別のイメージをかき立てた。まるで忙しい芸術家が適当に作った人間の像のように見えるのだ。

「私が興味を引かれたのは、この即席シェルターの材料と芸術的な形が、偶然にも彫刻のように機能している様子です」とコンドラチェフ氏は言う。新しく華やかなものに夢中になっている町で、古典的で控えめなものが想定外の美しさを発揮した芸術と言えるだろう。

(Photograph by Aleksey Kondratyev)
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参考記事:
特集「虚栄の都 アスタナ」
「独立から25年、岐路に立つタジキスタンをとらえた16点」

You can see more of Aleksey Kondratyev's work on his website.

文=Daniel Stone、写真=Aleksey Kondratyev/訳=北村京子

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