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カザフスタン、アスタナの庁舎(2012年)(PHOTOGRAPH BY FRANK HERFORT)

ソ連の解体後に出現したフシギ建築 写真24点

2018.05.23

 1950年代、ソビエト連邦の最高指導者スターリンが建てた7つの超高層ビルは、まるで社会主義時代のウェディングケーキのように天高くそびえ立ち、モスクワの景観を一変させた。大戦が終わって間もない頃だったが、指導部は膨大な建築費をかけて大学や省庁、ホテルといった高層ビルを建てた。中央集権に勢いをつけたいとの意図があったのだろう。モスクワは、連邦の新たな野心を表現するカンバスになった。(参考記事:「宮殿?モスクワの荘厳な地下鉄駅、写真10点」

 1991年にソ連が解体し、衛星国に勢力が及ばなくなった後、旧東側諸国は自ら道を作り上げなければならなかった。ドイツ人写真家フランク・ヘルフォルト氏は、2008年からソ連時代の車、ヴォルガに乗って、モスクワからカザフスタンのアスタナやシベリアに至る地域を回り、この20年間に出現した矛盾に満ちた建築物を記録して、『Imperial Pomp(帝国の虚飾)』と題する一連の作品にまとめた。

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ロシアのタタールスタン、カザンのロシア警察本部(2002年)(PHOTOGRAPH BY FRANK HERFORT)

「ロシアの街に行くと、どこも同じに見えます。モスクワからサンクトペテルブルクやノボグラードまで、同じような住宅ばかりです」と、ヘルフォルト氏は労働者のために設計されたアパートについて説明する。このような特徴のない建物の外観は、社会主義における市民のあるべき姿を象徴している。体制という機械の歯車の歯になれということだ。スターリンが建てた7つの超高層建築「セブン・シスターズ」は、長い間この規則の数少ない例外だった。この10年間に続々と誕生した新たな高層ビルは、ヨーロッパでも上位を争う超高層ビルであり、新たな時代の象徴である。(参考記事:「中央アジアに強制移住させられた朝鮮人の消えゆく文化 写真16点」

 ソ連解体後の建築物のすべてが過去に決別しているわけではない。モスクワでは、2006年に竣工した超高層アパート、トライアンフ・タワーが「8人目の姉妹」の愛称で呼ばれている。スターリン様式を踏襲し、50年以上前の建築物と調和しているからだ。この街は、過去の威力を賞賛しつつも、偉大な過去をしのぐという大望を抱いている。「いつでも自らを超えようとしています」とヘルフォルト氏は言う。

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カザフスタン、アスタナのバイテレク・タワー(2002年)(PHOTOGRAPH BY FRANK HERFORT)

 かつてソ連が支配していた地域でも、新たな建築物が個性を模索している。たとえばカザフスタンの首都アスタナでは、未来的なデザインや金ぴかのタワーが光景を一変させてしまった。(参考記事:「核の亡霊――世界の核実験の4分の1が行われた土地は今 写真24点」

 共通の歴史をもつにもかかわらず、これらの地域の独立後の発展は一様ではなかったと、ソ連解体後の中央アジアを専門とする美術史学者、カーシャ・プロスコンカ氏は説明する。ソ連時代に国造りは始まっていたものの、各国は自らの独自性を見出す必要があった。「個性は完全に消し去られることも、再構築されることもありませんでした。むしろ国の新たな上層部は、国際社会で自分たちの位置づけの重要性を確たるものにするために、選択的にその一部を忘れ去り、一部を特別扱いしようとしました」(参考記事:「ソ連時代の鉱山、時が止まったような街と人々の暮らし 21点」

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トルクメニスタン、アシガバートの結婚式場「幸福の宮殿」(2011年)(PHOTOGRAPH BY FRANK HERFORT)

 しかし、ソ連時代の機能的な共同住宅と違って、新たな建設プロジェクトは、ヘルフォルト氏の写真からわかるように、住民の本当のニーズにほとんど配慮していないようだ。写真にはあまり人が写っておらず、新築にもかかわらず空のビルもある。

 ソ連の解体後20年にわたって続いてきた建築ブームは、最近になって落ち着きを見せ、地方都市はより現実的な建物に回帰している。しかし、建築物は今もそこにある。過去が否定されたのちに再び賛美されるという周期も繰り返されるのだ。(参考記事:「独立から25年、岐路に立つタジキスタンをとらえた16点」

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ロシア、シベリアのハンティ・マンシースクのチェス・センター(2010年)(PHOTOGRAPH BY FRANK HERFORT)

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文=Christine Blau/写真=Frank Herfort/訳=山内百合子

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