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ボブキャット:滅多に姿を見せない野生ネコ家族と過ごした夏 写真12点

2018.05.15
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 ママキャットが他のボブキャットを追い払ったり、6匹の子を持つ母アライグマがボウルの水を飲みに来たところを殺したりするのを、アイグナー氏は目撃した。夕方、ウサギやネズミを家に持ち帰り、彼女の目の前で子どもに与えたこともあった。夜、子どもたちを残して出かけていくこともあった。

 観察を続けるうちに、子どもたちはどんどん勇敢で好奇心旺盛になり、やがて思い切って外に出て、自分で狩りに挑戦するようになった。(参考記事:「サメを海から引き揚げるネコの写真が話題に」

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子どもに狩りを教えるボブキャット。最初、母親は完全に死んだ獲物をデッキの下に運んできて、子どもは死骸を食べていた。(PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER)
時が経つにつれ、獲物は完全に死んだワタオウサギから生きているネズミやハタネズミへと変わっていった。戻ってきた母親が、まだもがいている獲物を置いて後ろに下がると、子どもたちは獲物を奪い合ってけんかを始めた。 (PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER)

「ママキャットが、彼女の世界に私を受け入れてくれたのです」とアイグナー氏は話す。「ボブキャットとはどんな生き物なのか、3匹の子を1匹で育てる母とはどういうものなのかを見せてくれました。お互いの世界に踏み込むことはしませんでした。私はただそこにいる以上のことをするつもりはなかったし、ママキャットもそれをわかっているようでした」

 夏が終わりを迎え、子どもたちが親離れする頃、アイグナー氏も通常の生活に戻るときがきた。しかし、この体験を忘れられなかった。その秋、仕事のためにテキサスに戻った際、再び牧場を訪ねることにした。

「あの一家はもういなくなっているはずだと、頭ではわかっていましたが、そうでないことを願っていました」とアイグナー氏は話す。「野生動物に対して愛着を抱きすぎないほうがよいのはわかっていました。密かに『うちの子』と呼んでいましたが、決して名前はつけませんでした。だけど、胸がドキドキしていました」(参考記事:「2017年、息をのむワイルドライフ写真44点」

 以前よくしたように家の下を見たが、子ボブキャットはどこにもいなかった。アイグナー氏が立ち去ろうとすると、向かいの階段から1匹のボブキャットがゆっくりと降りてきた。階段の下で立ち止まってこちらを向き、静かに腰を下ろし前足を舐めた。

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牧場の建物は、蒸し暑い午後の日除けになるだけでなく、子どもたちにとってはまるでジャングルジムや運動場のようだった。(PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER)

「ボブキャットが人間の前で毛づくろいすることは滅多にありません。私には、それがママキャットだとわかりました。ママキャットはこちらに目を向け、出会ったときにそうしたように見つめ合いました」

 このとき、アイグナー氏はどれほど自分が恵まれているか実感したという。「生き物の間には暗黙の関係があります。焦らず落ち着いて注意を払えば、生き物から多くのことを学べます」

 フェンスの穴をくぐり抜けてママキャットが去っていくのを、アイグナー氏は見つめていた。涙が頬を伝わり落ち、ささやいた。「さようなら、ママキャット。ありがとう」

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文=ALEXA KEEFE/訳=牧野建志

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