Photo Stories撮影ストーリー

2羽で空中戦を繰り広げた後、一方のハクトウワシが海に突き落とされた。(Photograph by Paul Nicklen)

海に落ちたハクトウワシ、このまま死ぬのか?

2016.10.26
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 カナダ西海岸のバンクーバー沖。ナショナル ジオグラフィックの写真家ポール・ニックレンと助手2人が水中の調査を終え、5メートルのボートで岸に向かっていたときのことだ。海面でもがいているハクトウワシに出くわした。しかも、急降下してくるもう1羽に襲いかかられている。

 エサや縄張りをめぐり、ワシ同士に小競り合いが起こるのは珍しいことではない。ときには空中戦に発展し、この2羽のように、一方が海に落ちることもある。ニックレン一行が見守っていると、落ちた方は強い海流に流され、もう1羽の攻撃の的にされ始めた。(参考記事:2015年1月号特集「素顔のハクトウワシ」

「どんどん体力を奪われていて、死ぬのは時間の問題でした」と、ニックレン氏。岸までまだ2~3キロある。手を差し伸べるか否か、一行は決断を迫られた。

襲われたハクトウワシは傷を負い、海に漂ったままだった。(Photograph by Paul Nicklen)
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「自然のライフリズムに関して、私は現実的な見方をしています」と、ニックレン氏。「もし相手が捕食者なら、どんなに胸が張り裂けそうでも手出しすべきではありません」(参考記事:「【動画】衝撃、子グマを食べるホッキョクグマ」

 野生動物への干渉はけっして良い考えではない。最優先すべきは、その動物や生息している生態系の保全だ。そのため、こうした場面に遭遇したとき、ニックレン氏はケースバイケースで判断する。(参考記事:「林典子:写真家は介入すべきか、キルギスの誘拐結婚」

 このワシを保護する決断は、感情に動かされた直感的反応だ、とニックレン氏は言う。生態系に何のプラスもマイナスも及ぼさないのなら、ワシをこのまま溺れさせてよいのか。ニックレン氏は助手たちと話し合い、共通の認識をもつ必要があることを確認した。3人とも、その点に迷いはなかった。

 このワシをボートに乗せるのは、至難の業だった。かぎ爪とくちばしの力が信じられないほど強かったのだ。幸い、ニックレン氏の助手が水中から引っ張り上げてボートに乗せると、ワシは乗り物の上で休むことができて落ち着いた。

ニックレン氏一行は、ハクトウワシを船に引き上げ、保護した。(Photograph by Paul Nicklen)
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一行がハクトウワシを陸に上げ、1時間後に戻ってみると、その姿は消えていた。(Photograph by Paul Nicklen)
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 さらに、この物語の締めくくりとして、ニックレン氏一行は、ワシを保護した直後、女性が行方不明になったとの無線連絡を聞く。女性の無人のカヤックは見つかっていたが、女性はどこを探しても見つからないと言う。一行がドローンを飛ばすと、女性が浜辺を歩いているのが見つかった。無事だった。

 日々、こんなことが起こっている。

文=Alexa Keefe/訳=倉田真木

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