• 北海道・十勝川の河口に張った薄氷が波で割れ、やがて海岸に打ち上げられる。その表面を霜がうっすら覆う。
  • 太陽柱とも呼ばれるサンピラー現象。風のない朝、十勝三股の樹海の上を漂うダイヤモンドダストに朝日が差し込むと、光の柱が立ち現れた。
  • 上士幌町のダム湖、糠平(ぬかびら)湖に残るタウシュベツ川橋梁に、大きな日暈(ひがさ)がかかった。決して珍しくない現象にも、どこか神秘性を感じる極寒の地の夜明け。
  • 糠平湖で厚さ50センチを超える青氷が、水力発電による水位低下に伴って割れた。冷え込んだ朝、空がオレンジ色に染まった。
  • 糠平湖で、割れた氷の断面をのぞいてみる。そこに閉じ込められた無数の気泡が、華氏0度の世界を象徴するような、小さな宇宙を構成していた。
  • 気泡を閉じ込めた糠平湖の氷の上を、粉雪が風に吹き飛ばされていく。
  • 晴れた日の早朝、十勝川河口付近の海岸に打ち上げられた氷片に、朝日が射し込んだ。
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提供/岩崎量示

 「深く息を吸い込むと、鼻の中が凍る。足元の雪が、薄いガラス片を踏んだような音を鳴らす。一歩外に出ただけで、その日の空気が昨日のそれとは違うことを体感する冬の朝がある…そのとき温度計が示すのは、氷点下20℃近く…華氏に換算すれば0度の朝だ」

 冬には日中でも氷点下が当たり前という国内屈指の厳寒地、北海道・十勝地方。その「寒さ」を表現した写真と手記を、本誌2016年1月号に掲載した。

 1979年、埼玉県生まれ。大学を卒業した後、働いてお金を貯めては北海道や沖縄を訪れ、キャンプしながら原付バイクで何カ月も旅をした。そのなかで出合ったのが、現在の居住地である北海道上士幌町糠平(ぬかびら)だ。2005年、現地に職を見つけて移住した。

 糠平に住み始めてから、近くのダム湖に残るかつての鉄道橋「タウシュベツ川橋梁」に魅せられ、写真を撮り始めた。打ち捨てられた橋は、コンクリートの割れ目に染み込んだ水が凍結と融解を繰り返すことで、冬を越すごとに崩落へ近づいている。壊れゆく橋の記録と併せ、数年前、橋を壊す「寒さ」にも注目するようになった。そうして生まれたのが、この「華氏0度の世界」の作品群だ。

 「2~3年後に壊れる」と思って10年前に撮り始めたタウシュベツ川橋梁は、今も11連のアーチを残している。今後も、橋が崩壊してなくなるまで撮影を続けるという。最近では、大雪山国立公園に位置するこの地域の自然や動物にも、レンズを向けるようになった。


『ナショナル ジオグラフィック日本版』2016年1月号「写真は語る」に、写真を追加して掲載した。

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