• 断崖絶壁に立つシモノスペトラ修道院。ここでは100人の修道士が日夜、祈りの生活を送っている。左奥には、聖なるアトス山がそびえる。
  • 祈りの始まるおよそ1時間前、当番の修道士が「シマンドロ」という木の板を数回叩き、合図を送る。聖堂の周りには、徐々に修道士や巡礼者たちが集まり出す。
  • 各修道院の司祭がフィロセウ修道院に集まり、徹夜の祈りを導く。身にまとうのは三角形の祭服(フェロン)。これには、十字架にはりつけられたキリストの苦しみを背負う意味がある。
  • キリストの血と体となる、ぶどう酒とパンを入れた聖杯と聖皿を捧げ持ち、このあと祭壇に移す。
  • キリストの体となったぶどう酒(聖血)とパン(聖体)を受ける巡礼者。この日、一番待ち望んだ瞬間。
  • フィロセウ修道院での徹夜の祈り。夜が明けるまで修道士たちの美しい声が聖堂に響き渡る。
  • 楽器を伴わず、肉声だけで歌う聖歌隊の声は、東洋的な響きと力強さをもつ。音楽会に来ているのかと思うほど美しい。
  • 祈りを終え、回廊で語らう修道士たち。
  • 修道生活は自給自足が原則。エーゲ海に臨む農場でトマトやキュウリ、イモ、オリーブなどを育てている。献立に合わせて収穫するのが日課だ。右奥には、963年創建のメギスティス・ラヴラ修道院が見える。
  • 晩の祈りを終え、翌日の食事の下準備をする。「キリエ・エレイソン」(主は、憐れめよ)と声を合わせて、玉ねぎをむく。
  • 夜中の3時、大祭に向けて300人分の食事を準備する料理上手の厨房係。献立は、タコとインゲンのトマト煮込みだ。
  • 「トラペザ」と呼ばれる食堂。食事も祈りの時であり、私語は決して許されない。祭りが催されたこの日、ごちそうに舌鼓を打つ修道士たち。
  • 毎週水曜日はユダの裏切りの日、金曜日はキリストがはりつけにされた日。この2日は油を使用せず、節食の日と決められている。豆、野菜、果物、オリーブが中心。
  • 標高2033メートルの聖なるアトス山。山頂には十字架が据えられ、生神女マリアの名を冠した聖堂がある。
  • 窓辺でイコン(聖像)を描く修道士。長い棒で利き手を支えて絵筆を動かし、手本となるイコンを正確に模写する。決して作者の名前が残ることはない。
  • 聖堂が開く前、祈りの時を待ち望む修道士。神への憧れの心が見える。
  • 聖堂に入らずに、外で祈る者もいる。もしかしたら寝ているのかも。祈りの形はそれぞれ自由だ。
  • 暗くなるのが遅い夏の食後、修道士たちは夜のとばりが下りる頃まで語らい続ける。
  • 死者は一度土葬され、数年後に掘り起こされて、骨が納骨堂に安置される。
  • 「死は恐れない。死ねば神の国で永遠の生命を得られる」。祈りを終えた修道士の1人が、エーゲ海を見渡し、穏やかにそう語った。
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撮影/Masashi Sugiyama

 ギリシャ北部の細長い半島にそびえるアトス山。その一帯はギリシャ正教の聖地で、船でしか入れない陸の孤島だ。600年以上前から女人禁制を貫き、修道士たちが祈りを中心とした生活を送っている。ひそやかな彼らの暮らしをつぶさに記録したのが、写真家の中西裕人だ。

 アトス山は世界遺産にも登録され、村上春樹氏の『雨天炎天』に収録された紀行でも知られているが、修道院の内部や修道士の生活を撮影できる機会はほとんどない。日本のアトス研究の第一人者を父にもつ中西は、正教徒として洗礼を受け、特別な許可を得たうえで、2年前に取材を始めた。

「それまで、家族のなかで自分だけ洗礼を受けていませんでした。宗教に対する抵抗感があったからです」と中西は話す。「でも、修道士たちの暮らしに密着して取材したいという思いがありました。自分が正教徒にならないと、彼らが心を開いてくれないと思ったんです」

 聖地という言葉から、厳しさだけを連想していた中西だが、修道士たちの祈る喜びや、自分をはじめ、巡礼者に接する姿を目の当たりにして、考えを大きく変えた。修道院で集団生活をする者、修道小屋での一人暮らしを選ぶ者。生活の場を自由に選ぶ彼らを見て、「祈りとは千差万別、自分と神の一対一の関係であるのだ」と気づいた。「聖地で自由に生きる彼らの喜びを、今後も伝えていけたらと思う」

 出版社専属のカメラマンを10年ほど務めたのち、2015年に独立。雑誌や広告の仕事に携わりながら、アトス山の取材を続けている。「ギリシャ国内のほかの正教会をはじめ、各国の正教会も撮影していきたいと思っています。すでにブルガリア正教会の取材は始めました。そしてゆくゆくは、日本の正教会も。祈りと人との結びつきを伝えたいと思います」


『ナショナル ジオグラフィック日本版』2016年12月号の「写真は語る」に、写真を追加して掲載した。

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