• 雨が降ると、クモたちは一目散に草木の葉裏や巣へ逃げ帰る。鉢植えの花の上で霧吹きの“雨”を浴びたデーニッツハエトリの雄は、たちまちジャンプの準備態勢をとった。<br>画像17点を多焦点合成
  • クモを撮り始めて約2カ月後のある日、黄色い脚に白い毛並みの美しいクモを撮影した。いくら調べても名前がわからず、どうやら珍しいハエトリグモらしい。この種には翌年、クモマハエトリというすてきな和名がつけられた。<br>画像22点を多焦点合成
  • 大きな上顎をもつアリグモの雄。その名の通り、アリによく似た姿で、慣れないうちは肉眼ではアリと見分けがつかないほどだ。ハエトリグモの仲間でも活発によく動く種で、なかなかじっとしてくれず、撮影には苦労した。<br>画像50点を多焦点合成
  • ヨダンハエトリの雄。触肢や脚の飾り毛、背面を彩る赤と白の模様が華やかで、日本にいるハエトリグモでは一番カラフルな部類に入る。堂々とした姿のわりに、神経質で警戒心が強く、ハエトリグモ随一のすばしっこいクモだ。<br>画像46点を多焦点合成
  • 霧吹きの水滴に反応して、前脚を上げたカラスハエトリ。この「バンザイ」ポーズは驚いたときの反応なのか、別のクモと鉢合わせしたときなどにも見られる。<br>画像27点を多焦点合成
  • 求愛中のデーニッツハエトリ。雄と雌が出会ったときにも「バンザイ」ポーズはよく見られる。雄(左側)はしきりに前脚を上げるが、体を大きく見せてたくましさをアピールしているのか、襲わないでくれと訴えているのか、本当のところはよくわからない。<br>画像8点を多焦点合成
  • 産卵後7日目のアオオビハエトリの雌。産室をつくってその中にこもり、20個ほどの卵を産んだ。ハエトリグモの雌の多くは、産卵して子グモが巣立つまで、約4週間も飲まず食わずで過ごす。<br>画像36点を多焦点合成
  • アオオビハエトリの雌と、孵化後8日目の子グモたち。産室をハサミでそっと開くと、母グモがさかんに威嚇してくる。子を守る母の勇敢さは、どの生き物も変わらない。心の中で「ごめんね」と謝りながら産室をなるべく元通りに閉じておくと、開けた穴は翌日にはしっかり補修されていた。<br>画像52点を多焦点合成
  • アブラムシを捕食するメスジロハエトリの幼体。巣立ち後のハエトリグモは、ハンターとしての本能が目覚めるのか、動くものに敏感に反応する。小さすぎて肉眼ではわからなかったが、撮影して初めてアブラムシを捕食している様子が確認できた。<br>画像4点を多焦点合成
  • アシナガキンバエを捕食中のカラスハエトリ。ハエトリグモはハエが大好物だが、カゲロウや蚊、バッタ、クモなども捕食し、アリを好んで狙う種類もいる。<br>画像78点を多焦点合成
  • アリを捕食するアオオビハエトリ。このクモはほかの獲物も食べるが、アリが一番の大好物で、アリの隊列の近くで目にすることが多い。アリも大きな牙をもつので、獲物としてはリスクが高いはずだが、不思議な習性だ。<br>画像10点を多焦点合成
  • ハエを捕食するマミジロハエトリ。ハエトリグモの大きな目(前中眼)は、他のクモよりも視力にすぐれ、チャームポイントにもなっている。目が大きいといっても、その直径は推定で1ミリほど。小さな瞳に、この世界はどう見えているのだろうか。<br>画像69点を多焦点合成
  • 霧吹きの“雨”を浴びたネコハエトリ。クモを撮り始めた年はゲリラ豪雨が多く、突然の雨に逃げまどうクモが足をすべらせ、慌てふためく様子をよく目撃した。雨への反応はクモの種類によって違うのだろうか。そんな興味から、自宅でも霧吹きを使って雨を再現してみた。<br>画像79点を多焦点合成
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 多焦点合成によるハエトリグモの写真で、日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2015のネイチャー部門最優秀賞を受賞。本誌8月号「写真は語る」に手記と写真を掲載した。

 1964年東京都生まれ。写真の世界へ足を踏み入れたきっかけは、初めて見たオーロラへの感動だった。オーロラの見える地域を毎年訪れ、18年ほど撮影を続けた。悪天候が続いてオーロラが撮れずにいたある日、ふと接写レンズでのぞいた雪の結晶の美しさに息を呑む。「これをカメラでとらえられないだろうか?」と接写用の機材の工夫を重ねるうちに、雪のない時期、レンズのテスト用に何の気なしに撮ってみたのがクモだった。

「実は子どもの頃から、生と死のドラマが交錯するドキュメンタリー番組が大好きでした」。だが野生動物の世界で、実際にそんな光景を目にする機会はめったに訪れない。ある時、機材のテストのために立ち寄った都内の公園で、ハエトリグモが獲物に飛びかかる瞬間を目撃した。遠路はるばる出かけなくても、求めるドラマはすぐ足元で繰り広げられていたのだ。

「クモの姿や迫力を、感じたままに写したい」と試行錯誤を繰り返した。体長7ミリ前後のクモをアップで撮るとピントが合うのは一部だけで、あとはぼやけてしまい、行き詰まりを感じていた。だが2013年、フォーカススタッキング(多焦点合成)という技法の存在を知った。これなら焦点をずらしながら撮影した複数の画像をデジタル合成することで、精細な表現が可能になる。

 多焦点合成の撮影にはわずかな風も大敵だ。そこで自宅で鉢植えの花を舞台に“スタジオ撮影”を始めた。撮影後のクモは元いた場所にリリースするが、時には生態を深く知るため、しばらく飼うこともある。すると、それまで断片的に見てきた場面同士がつながりをもち始め、「食べて、寝て、子孫を残す」といった、どこか人間と共通する営みも見えてきた。「マクロレンズを通して見るクモたちの世界は、新鮮な驚きに満ちていました」


『ナショナル ジオグラフィック日本版』2016年8月号「写真は語る」に、写真を追加して掲載した。

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