• バングラデシュの首都ダッカにある皮革工場地帯ハザリバーグの製革所で、タンニン槽に皮を引き入れてなめす準備をする労働者。
  • 原皮から毛を取り除くための石灰槽、皮をなめすためのタンニン槽やクロム槽など、工程によって異なる槽に皮を漬け込んでいく。薬液はそのまま川へ垂れ流される。
  • 大きな回転式ドラムの中から、薬品で染色した皮を一枚一枚、素手で取り出す労働者。長靴も履いていない。
  • ダッカの南東200キロにあるノアカリ県出身の男性。ハザリバーグで働き始めて15年以上になる。「仕事は忙しいよ。おかげで家族を養うことができている」と言う彼の爪は、薬品被害のために溶けていた。
  • なめした皮は染色後、天井につるして乾燥させる。
  • 1日の仕事が終わり、体に付いた薬品や悪臭を工場のシャワーで洗い流す。彼は8~17時の勤務だ。製革所の労働者は日本円で平均500円ほどの日当を受け取り、多くが工場近辺のアパートなどに居住している。
  • バングラデシュの首都ダッカ郊外にあるれんが工場で、焼き上がったれんがを頭上に積む労働者。1個3キロほどのれんがを、一度に10個以上運ぶ。
  • れんがの原料は、工場の敷地内などで採れる粘土。それを掘り出す作業も人力だ。作業を終えると、両手は粘土まみれになる。
  • 女性や子どもも一緒に、干したれんがを荷車に積む。一つの工場で1日平均6000~1万個が作られ、1個7タカ(約10円)で取引される。
  • 天日干ししたれんがを窯に運ぶ。1日の賃金は、運んだ回数によって異なるが、およそ300タカ(約400円)。この工場では数十人が働く。
  • れんが運びの合間に水分を補給する労働者。1日約8時間働き、休日は週に一度。「家族に会いに帰りたい」という言葉が心に残った。
  • 手鏡を見ながらひげをそる男を、仲間が見つめる。彼らは現場の小屋に住み、仕事を終えると水浴びやトランプ遊びをして過ごす。
  • 粘土の山の上で、しばしの休息。地方からの出稼ぎ労働者のなかには、家族でやって来る者もいて、子どもも貴重な労働力となる。
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 働くとは何か? その答えを探し求めて、南アジアのれんが工場や造船所などで肉体を駆使して働く人々にレンズを向けてきた。2013年から2015年にかけては、バングラデシュの皮革工場地帯ハザリバーグの製革所で皮をなめす労働者たちを撮影。その作品を私家版写真集『Tannery』にまとめ、本誌2016年7月号の「写真は語る」にも掲載した。

 1980年宮崎県生まれ。大学卒業後、日本語教師としてタイの大学に1年間勤務したほか、帰国後には小学校教員として6年間教壇に立った経験もある。

 2010年、教員を辞めて写真家になろうと決意してまもなく、自転車でのインド旅行に挑んだ。購入したマウンテンバイクとデジタル一眼レフカメラを携えて、首都デリーに降り立ったのは同年8月。2500キロ離れたムンバイを目指して走っていた途中、通りがかった小さな町で染織工芸品の「更紗(さらさ)」を生産する工場を見つけた。そこで働く職人たちの自信と誇りに満ちた表情に引かれ、夢中でシャッターを切った。それが、「働くとは何か」をテーマに写真を撮ろうと思ったきっかけの一つだった。

 それからしばらくは、根源的な労働の姿をとらえた作品を発表していた。しかし、ハザリバーグの製革所を撮影するなかで、興味の対象が少しずつ変化する。労働者と日本とのつながりも意識するようになったのだ。

「欧米やほかのアジアの連中は、俺たちがつくった革を、誰がなめしたかなんて何も知らずに使ってるんだぞ。この状況を生んだ責任は俺たちだけにあるわけじゃない」。若い製革所経営者から聞いたこの言葉が、今も心に残っているという。

「今後は、日本で農業や漁業、林業に携わる人など、生活の根幹を支えている人に光を当てるような作品も撮っていきたい。こういう人たちのかっこいい姿を撮りたいんです」。海外で撮影テーマを見つけた気鋭の写真家はいま、祖国にもその温かいまなざしを向け始めた。

 バングラデシュの造船所を撮影した作品で、日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2015のピープル部門最優秀賞を受賞。


『ナショナル ジオグラフィック日本版』2016年7月号と2014年12月号の「写真は語る」に、写真を追加して掲載した。

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