ニューヨーク個展体験記――八木豪彦(日経ナショナル ジオグラフィック写真賞グランプリ)

2016.10.05
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Photograph by Olivia Pasquarelli
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『日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2015』のグランプリの受賞特典の一つとして、受賞者である八木豪彦さんの個展「Diving into the Colors of Holi」が、2016年9月、米国ニューヨークのFoto Care Galleryで開催されました。ここでは現地での写真とともに、ご本人に今回の個展で得たもの、感じたものを語っていただきます。

 2016年2月に写真賞グランプリを受賞してから半年以上、ニューヨークへ出発する間際まで、今回の個展の準備を重ねてきた。苦労したのは展示のコンセプトを固めること。表現者として、自分自身とは何者なのかを言葉にしてナショジオ編集部へ伝えていく過程では、慣れないことも多く、何度も力不足を痛感した。

 北米は、僕が写真家になるきっかけとなった土地。7年前、大学の短期留学で約4カ月間、カナダに滞在したことがあった。ある小旅行でオーロラを観測、地球のダイナミズムに感動し、写真を本格的に始めようと決意したのだ。そして、今回は自身の個展のために芸術都市ニューヨークに初めて足を踏み入れることとなった。

Photograph by Olivia Pasquarelli
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 僕は余裕を持って1週間前に現地入りし、個展初日までの時間をギャラリーや美術館巡りに費やした。チェルシー地区に点在するギャラリーでは、オープニングレセプションがあちこちで催されていた。レセプションは敷居が高いように感じていたが、誰でも自由に出入りでき、みなが気軽にアートに触れていた。ほかにもニューヨークアートブックフェアーに足を運んだり、ナショナル ジオグラフィック誌でも有名な写真家スティーブ・マッカリー氏の展示を見学しに行ったりした。

 おかげでたくさんの刺激を受けて、個展開催を迎えることができた。

Photograph by Ronald Herard
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 オープニングレセプションには、なんと150人もの方々がいらしてくださった。自分の写真がどんな風に見てもらえるか、不安で仕方なかったが、来場者の方々からは「写真からエネルギーを感じる。美しく感動した」「人々の内なる表情をよくキャプチャーしている」「写真は1枚の静止している物だが、動いているかのようだ」など、僕の想像を超える言葉が返ってきた。

 スピーチでは、僕がHoli (インドの春の色祭り) を撮っている経緯、そして、なぜ写真を撮っているのかを多くの方々に伝えられ、何事にも変えられない大きな財産となった。多数のメディアにも関心を持ってもらい、 The Guardian や、 L’Oeil de la Photographie などに紹介された。

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 展示以外では、現地で活躍する写真家と面会したり、チェルシー地区のギャラリーオーナーにポートフォリオレビューをしていただき、第一線のプロの立場からの意見も頂戴した。「被写体により興味を持ち、好奇心をさらに強く、驚いたことをもっと写真に表現する、そして、考える努力、自分自身を信じることが大切だ。なによりも写真を楽しむことを忘れてはならない」と、今後の道筋となる助言をしてくださり、濃密な滞在となった。

 最後に、ニューヨーク個展で多くの人々に僕の写真を見ていただくことができ、写真の可能性の高さ、また、芸術には言葉の壁を越える力があることを強く実感した。同時に、世界はまだまだ広いことも体感、これからさらに表現の幅を深め、「もっと世界に挑戦していく」ことを決意する個展となった。

 多くの方々にサポートをいただき、この先、結果で恩返ししていけるよう、もっと写真に向き合いたい。

八木豪彦

【フォトギャラリー】写真家 八木豪彦「ホーリー/88歳の現役医師」

お知らせ: 日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2016の作品を募集中です。締切は2016年10月31日。今年も世界での活躍を望む 写真家の、力あふれるドキュメンタリー写真のご応募をお待ちしています。

日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2016 作品募集のお知らせ
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