ニューヨーク個展体験記――峯水亮(日経ナショナル ジオグラフィック写真賞グランプリ)

2017.06.29
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Photo courtesy Ryo Minemizu
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『日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2016』のグランプリの受賞特典の一つとして、受賞者である峯水亮さんの個展「the Secret World of Plankton」が、2017年6月、米国ニューヨークのFoto Care Galleryで開催されました。ここでは現地での写真とともに、ご本人に今回の個展で得たもの、感じたものを語っていただきます。

 アメリカと言えば、十数年前に西海岸のモントレーという街に3カ月ほど滞在したことがある。このときは、ほぼ毎日カリフォルニアの海に潜って撮影する日々だった。20代からずっと海とともに歩んできた私にとってニューヨークは縁遠い地で、今回の個展開催がきっかけで初めて訪れることとなった。

 今回の作品展示のテーマとコンセプトは早くから固まっていた。それは、人々によく知られた人気の海の生物ではなく、一般的には知られてこなかったわずか数ミリの小さな命の存在を知ってもらうことだ。作品選考は悩まずに固まっていたものの、タイトルについては最後までなかなか決められなかった。今回のニューヨーク個展の現地広報を担当してくれたアンドレアさんなどの意見も踏まえながら、「The Secret World of Plankton」という、誰もが興味を持ちやすく、なるべくストレートに内容を理解できる、わかりやすいタイトルをつけることで決着した。

Photograph by Yoshinori Kuno
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 展示する作品は「Cradle of Deep sea」「Art for defense」「Adaptation for floating」「Minimal Jewels」という4つのテーマに分類し、最終的に24枚の作品を飾ることにした。印刷はすべて日本の凸版印刷株式会社に依頼し、プリンティングディレクターの小島勉氏に打ち合わせから仕上げまでの全工程を担当していただいた。プランクトン特有の透明感を求めるなら、迷いなく光沢紙を選ぶところだが、今回は生物そのものの形や自然が生み出した機能美に注目してもらうため、マット仕上げを選んだ。背景の黒が締まることで、見せたい部分を強調できるからだ。

 自身初の個展開催地がニューヨークとなったわけだが、アメリカの芸術拠点であるこの街で、いったいどんな評価を受けるのか、開催してみるまでは全く想像することができなかった。日経ナショナル ジオグラフィック社や米Foto Care社、米ナショナル ジオグラフィックパートナーズのサポートのおかげで、オープニングレセプションは盛況に開催された。

Photograph by Yoshinori Kuno
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 スピーチでは、なぜ私はこのような海の小さな生き物たちの撮影を続けてきたのかについて、その思いのすべてを込めて伝えた。来場してくれたゲストはニューヨークで活躍するプロの写真家やアーティストが多くを占め、また、地元紙のピックアップ記事やSNSなどからの情報で集まった自然に興味のある方、ブロガー、ダイバーなど総勢200名を超す沢山の方々が来場してくれた。

 多くの方に「とても素晴らしい」「どれも美しく、すごく刺激を受けた」とお声をかけていただき、作品への評価をいただいたこと、小さな生き物たちにも興味を持っていただいたことは素直にうれしかった。そして、中には「私たちにこんな素晴らしい作品を見せてくださる活動をしてくれてありがとう。心から感謝します!」というゲストの言葉には心の奥から熱くなるのを感じた。ニューヨークの人々の寛容な優しさに私自身が触れた瞬間だ。

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 一方で、熱心に生物や写真のことを質問するゲストがいたことは、私の望んでいたことであり、この先もさらに多くの人々が生き物たちのことについて興味を持ち、気にかけてくれる人が増えることを願っている。

 滞在中に各メディアに露出が始まったころから、普段の数倍の問い合わせがひっきりなしに入ってくるようになった。アメリカ国内だけにあらず、フランスやドイツ、オーストラリアなどにも及び、世界中に配信されていることを体感できた。個展開催中にこのメディア対応を一人でするのはほとんど不可能で、対応が遅れると大きなチャンスを台無しにしてしまうことさえある。信頼する写真家向けエージェント会社にすべての対応を任せていたおかげで、自身の負担を大幅に減らすことができた。

Photograph by Yoshinori Kuno
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 4日間という短い期間を、駆け足ながらも無事に終えたニューヨーク個展。閉じこもっていては絶対に出会うことのない人・文化・芸術に触れることができて、あらゆる面で得たものは多かった。しかしながら、今回の個展すべてにおいて100点だったとは到底思えていないのも事実だし、修正しなければいけない課題点も見つかった。それが明確に整理できたことは大きな収穫であったし、今はすぐにでもそれを撮りたい衝動に駆られている。そして、数年のうちに必ずこの地に舞い戻ってくることを自らに誓い、後はひたすらその目標に向かって突き進むだけだ。この経験は私を大いに奮い立たせてくれた。

峯水亮

日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2017 作品募集のお知らせ
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