香港の店で販売されるプラスチック製ストロー。(PHOTOGRAPH BY ANTHONY WALLACE, AFP, GETTY)
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 2018年7月1日、米ワシントン州のシアトルがプラスチック製ストローの使用を禁止した。

 シアトルだけではない。大手コーヒーチェーンのスターバックスは2020年までにプラスチック製ストローの提供を徐々に減らしていく計画で、マクドナルドも英国とアイルランドの店舗でプラスチック製ストローを禁止すると発表した。他にもフードサービス会社や航空会社が同様の取り組みを発表している。

 こうした動きの背景には、ストローが世界の海で生き物たちを脅かしていること、そしてそれを何とかしたいという世間の要求がある。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」

 ある調査では、米国だけで1日5億本のストローが使用されているという。また今年初めには、世界の海辺が83億本ものストローで汚染されているという研究結果も発表された。(参考記事:「1日5億本、「ストローいりません」が米国で拡大中」

 毎年、800万トンのプラスチックが海へ流出しているが、そのうちストローが占める割合はわずか0.025%である。それでも環境問題でストローが大きな標的になっている理由は、大半の健常者にとって、ストローがなくてもほぼ困らないという点にある。使用をやめるのに、大した努力は必要としない場合がほとんどだ。

 しかし、なくても困らないなら、そもそもなぜストローはここまで浸透したのだろうか。

参考動画:鼻にストローが刺さったウミガメを救助(画像クリックで記事ページへ)
ウミガメの鼻からプラスチック製のストローを10分近くかけて研究者らが引っ張り出す、胸を突き刺すような動画がネットで話題を集めた。

飲み物用の細長い筒

 プラスチック製のストローが発明されたのは最近のことだが、それよりはるか昔から、人々は細長い筒を使って飲み物を飲んでいた。5000年前にビールを醸造していた古代シュメール人は、貴金属でできた細長い筒を大きな壺に入れて、表面に浮いた発酵副産物の下にある液体を吸い上げて飲んでいた。(参考記事:「酒と人類 9000年の恋物語」

 1888年、米国のマービン・ストーンという人物が、初めて飲用ストローの特許を申請した。スミソニアン協会の文献によると、1880年の夏のある暑い日、冷たいカクテルを飲んでいたところ、ストローとして使っていたライ麦の茎が型崩れしてしまった。たばこ用巻紙の製造会社を経営していたストーンは、自分ならもっといいものを作れるんじゃないかと思ったという。

 早速、細長い紙を鉛筆に巻き付けて糊で貼り合わせ、紙製ストローの試作品を完成させた。1888年にこのデザインで特許を申請し、1890年には自分の工場で大量生産を始めた。

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