ストローはこうして世界を席巻した、その短い歴史

世界の海辺に83億本、人類はストロー汚染から立ち直れるか

2018.07.11
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【動画】プラスチックはいかにして世界を変えたか(解説は英語です)

 曲がるストローが発明されたのは、1930年代に入ってからのことだ。自分の娘がまっすぐのストローからミルクシェイクをうまく飲めずに苦労しているのを見て、発明家のジョセフ・フリードマンにアイデアがひらめいた。ストローの中にネジを入れて、ネジの溝に合わせてデンタルフロスを巻き付け、その後ネジを取り出した。ネジの跡がついたストローは、破れることなく簡単に曲がった。フリードマンはこの発明で特許を申請し、フレックス・ストロー・カンパニーを設立した。

 曲がるストローに最初に目を付けたのは、病院だった。これなら、患者はベッドに寝たまま飲み物を飲むことができる。その後炭酸飲料やミルクシェイクにも使われるようになり、数十年で曲がるストローは全米に広がっていった。

プラスチック産業の隆盛

 紙製ストローが盛んに使われていた頃、米国ではプラスチック製品の製造も始まろうとしていた。

 1870年、ジョン・ウェスレー・ハイアットという米国人が、象牙など動物由来の素材に似せたセルロイドを使って、初めてのプラスチック製品を開発した。それ以来、家庭用品に使われるベークライト、ストッキングに使われるナイロン、軍用機に使われるアクリルなど、様々な合成樹脂が誕生した。

 耐久性に優れていて安価なプラスチックは、第二次世界大戦中に軍事用に大量に製造された。サイエンス作家のスーザン・フリンケル氏は、著書『Plastic: A Toxic Love Story(プラスチック:有毒なラブストーリー)』の中で、戦時中にできたプラスチックの製造インフラが、製品の供給先を突然失ってしまったと書いている。そこでメーカーは、当時成長著しかった「安価な消費財」の市場に目を向けた。戦時中の倹約生活から解放された国民は、より安いものをより多く求めていた。

「元気を取り戻した米国民の前に、安価なプラスチック製品が無限に並び、よりどりみどりの状態になったのです」と、フリンケル氏は書いている。

プラスチック製ストローの登場

 そうして、大企業が大量生産する使い捨て製品のひとつとなったのが、ストローだった。プラスチック製ストローの製造コストは、見る見るうちに低下した。紙製よりも耐久性があり、ファストフード店で出される紙コップの蓋の十字の切込みに破れることなく簡単に差し込める。1960年代には、プラスチックストローを大量生産する製造インフラが整うことになる。

 フリードマンのフレックス・ストロー・カンパニーは、買収された後、1970年代に全米有数のストロー製造会社に成長、今もプラスチック製品を製造し続けている。

「プラスチックのストローは、安いし質もいいですし、破れないという利点がありました」と、現在、紙製ストローを製造するアードバーク・ストロー社世界事業部のデビッド・ローズ氏は言う。「確かに安くて良い製品ではありましたが、当時は環境への影響について誰一人考えていませんでした」

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