北米最古の犬、ほぼ消滅していた

1万年前の遺骨のDNAを現代の犬と比較、交雑の痕跡もほぼゼロ

2018.07.09
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【動画】犬の歴史を概観する
人類最古の仲間として、イヌは数千年も私たちの側にいる。私たちとイヌの歴史がいかに深く結びついているか、愛らしいイヌたちが、恐ろしい肉食動物から忠実な番犬、そして家族の一員へとどのように進化したかを知ろう。(解説は英語です)

 太古のイヌと入植したイヌの「異種間交配が確実にあっただろうと考えていました」とペリー氏は話す。しかし、遺伝学の答えは違った。現代のイヌ5000匹以上を分析したなかで、ヨーロッパとの接触以前のイヌの痕跡をかすかにでも残していたのは5匹だけだった。

「これ以外、私たちが分析したイヌはどれもこれもユーラシア起源でした」とペリー氏は言う。 「アメリカ古来のイヌだと人々が思っている犬種は、いずれもユーラシアのイヌなのです」

 太古の犬の遺伝的痕跡がこれほどまでに消えてしまったのはなぜか? いくつかの原因が考えられる。

 まず、人間の場合と同じく、ヨーロッパのイヌがもたらした病気に対し、古代犬が免疫を持たなかった可能性がある。それにヨーロッパの入植者が、自分たちの犬種を好んだことが考えられる。「ヨーロッパの犬種を北米のイヌと交配させるなど許さないという、実に厳しいルールがありました」とペリー氏は語る。これらのイヌは「野生」で「凶暴」と見なされた。そして、ヨーロッパ人が先住民を殺した際、彼らの犬も一緒に殺すことがたびたびあった。(参考記事:「ブルドッグが危機、遺伝的に似すぎ」

不吉な遺産

 消えたとみられる北米の太古のイヌたちだが、彼らは可移植性性器腫瘍(CTVT)という形で、不吉な遺産を置いていった。(参考記事:「新型犬インフルを確認、人間で大流行の可能性は?」

 恐ろしげに聞こえるが、こうした腫瘍が命にかかわることは通常ない。伝染性の腫瘍細胞がイヌからイヌに(普通は交尾を通じて)うつされるたびに、元のDNAのコピーが渡される。そのため腫瘍細胞には、病気を発症した感染源のイヌの断片が残っていると、米国立ヒトゲノム研究所、がん遺伝学・比較ゲノム学部門チーフで、今回の研究には関わっていないイレーヌ・オストランダー氏は説明する。

 現代の腫瘍の分析から、この病気の「患者第1号」だったイヌは8225年前まで生存しており、おそらく北米のイヌであったことが示唆されている。オストランダー氏は「本当に驚くべきことです」と話し、今回の成果は、研究者が他の病気の起源をさかのぼるのに役立つかもしれないと付け加えている。

ギャラリー:「犬の楽園」へようこそ 写真15点(画像クリックでギャラリーページへ)
中米コスタリカにある犬の保護施設。約1000頭が暮らしており、そのすべてに名前がつけられている。(PHOTOGRAPH BY DAN GIANNOPOULOS)

 同研究所イヌゲノムプロジェクトの科学スタッフであるハイジ・パーカー氏は、「現在では絶滅した初期の北米犬の痕跡が、実は腫瘍の中に保存されていて、それによって永遠に存続していくという考えは、非常にクールです」と語る。

 したがって、まだアメリカ大陸古来の犬種を飼うことをあきらめられないなら、性器の腫瘍をもつ犬を見つければ、希望が叶うかもしれないとペリー氏は笑う。「元々のアメリカ犬は死んでおらず、性器のがんの中で生きているということです」

文=MAYA WEI-HAAS/訳=高野夏美

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