北米最古の犬、ほぼ消滅していた

1万年前の遺骨のDNAを現代の犬と比較、交雑の痕跡もほぼゼロ

2018.07.09
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 コスター犬は、埋葬された世界最古のイヌというわけではない。1万4000年前のドイツの墓に、2人の人間と、深く愛されていた1匹のイヌが納められている。しかし、そのイヌのために個別の墓が作られた例としては、これまで見つかっている中でコスター犬が最も古い。

 コスター犬には食肉処理された跡がないため、食料よりもむしろ友だったのだろう。これは、初期のイヌには必ずしも当てはまらないことだ。また、埋葬されていたことは、死んだイヌへのある種の敬意を表している。ペリー氏によると、多くの場所で、イヌたちは「ごみの中に投げ込まれていました。細かい断片になったイヌの体が、そこら中にある」のだと言う。しかし、1匹ずつ葬られた犬たちは優秀なハンターであり、最も大事にされていたことを表すのだろう、とペリー氏は語る。(参考記事:「犬の食肉処理に初の違法判決、韓国」

 カナダ、アルバータ大学所属で、今回の研究には関わっていないロバート・ロージー氏は、この発見について、アメリカ大陸で非常に早い時期から「イヌが先住民社会で非常に特別な役割を果たしていた」ことを示していると話す。「彼らは人々がともに暮らした唯一の動物であり、埋葬されていた唯一の動物でした」

現代のイヌたちとのつながりは

 私たちと暮らす現代のイヌはすべてタイリクオオカミから生まれたが、いつ、どこで、何回にわたって家畜化されたのかは、まだ議論が続いている。大半の研究者は、1万6000年前にはイヌが家畜化されていたと考えている。そして間もなく、イヌは人間とともに世界中に広がり始め、アメリカ大陸にも入った。(参考記事:「イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より」

ギャラリー:どの子が好き?愛らしいイヌたちの写真10点 (画像クリックでギャラリーページへ)
生後3カ月のチワワ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

 自分のペット、例えばカロライナ・ドッグ、ショロ(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)、チワワのように、よく「古代犬」と呼ばれる犬種が、ヨーロッパと接触する前の古い犬種の子孫だと考えたがる人は多い。(参考記事:「絶滅寸前から復活、3500年続く古代犬種“ショロ”」

 しかし、現代のイヌのDNAは数千年にわたる交配・育種によって複雑になっている、とペリー氏は説明する。「今のイヌのDNAはスープのようにどろどろした、ごちゃ混ぜの状態です」と氏は話した。

 そこで、北米のイヌの歴史を調べようと、研究者たちは太古の遺骨の分析に目を向けた。コスター犬が研究対象となったのはこのためだ。

研究者らは、ヨーロッパによるアメリカ大陸入植の前に生息していた古代犬70匹以上の遺伝的性質を解析した。(PHOTOGRAPH COURTESY ILLINOIS STATE ARCHAEOLOGICAL SURVEY)
[画像のクリックで拡大表示]

 ペリー氏らは、コスター犬を含む、北米とシベリアで見つかった太古のイヌの遺骨に含まれる71のミトコンドリアゲノム(母イヌから子イヌに遺伝するDNA)と、7つの核ゲノムを解析。次いで、それを5000匹以上の現代のイヌの遺伝的性質と比較した。その中には、ビレッジドッグと呼ばれる半野生のイヌや、かつてはアメリカ古来の系統とされていたイヌも含まれている。(参考記事:「イヌが人懐こくなった理由は「難病遺伝子」に」

 その結果、アメリカ大陸の太古のイヌはすべてシベリアの共通祖先に由来し、その遺伝的特徴は世界中のどの犬とも異なることが示唆された。今ではその遺伝的な特徴は完全に消え去ったらしく、16世紀にヨーロッパの入植者が連れてきたユーラシアのイヌによって、ほぼ完全に置き換えられた。

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