ポンペイで発見された「首なし遺体」 本当の死因

失われた頭部が発見され、新たな死因が浮かび上がった

2018.07.03
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発掘された頭部がない遺骸。当初は、ベスビオ火山の噴火で飛んできた巨大な岩に押しつぶされたのだろうと、ポンペイの考古学者は推測していた。(PHOTOGRAPH BY CIRO FUSCO, ANSA VIA AP)
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 西暦79年、イタリアのベスビオ火山の噴火で灰に埋まった古代都市ポンペイ。2018年5月の調査で、頭部のない男性の白骨遺体が発掘された。当初は噴火から逃れる途中で、巨石に押しつぶされたと考えられていたが、その後、頭部も発見。ポンペイ考古学公園は、新たな死因を発表した。(参考記事:「古代都市ポンペイは、現代社会にそっくりだった」

 頭部が発見されたのは、遺体の近くで、口は大きく開かれていた。ポンペイ考古学公園は、「岩による圧迫死ではなく、火砕流に巻き込まれて窒息死したものと考えられます」とフェイスブックで発表した。

 2000年前に大噴火したベスビオ火山は、巨大な柱のような噴煙を噴き上げ、翌日には火砕流が山の斜面を駆け下った。(参考記事:「【動画】ポンペイの馬、馬具を付けていた理由は?」

 火砕流は、火口から出た火山ガス、火山灰、石や岩が混じり合って山の斜面を高速で流れ下る現象。「岩や灰を含んだ熱風で、風速はハリケーン級。熱風の通り道にあるものはすべて破壊します」と、米スミソニアン協会の世界火山学プログラムGVPのディレクター、ベンジャミン・アンドルーズ氏は火砕流の恐ろしさを語る。アンドルーズ氏は火砕流を、野球やボウリングのボール大の岩石が混じる非常に高温のサンドブラスト(研磨材を吹き付ける加工法)にたとえた。

「火砕流に巻き込まれたら、人はまず死んでしまいます」と、アンドルーズ氏は続ける。ポンペイで発見された、頭骨がなかった男性の足の骨には感染症に侵された跡があり、速くは歩けなかったと推定されている。その彼に、猛スピードで迫る摂氏500度を超える高温の火砕流から逃げ切れるチャンスはなかっただろう。

 今回見つかった頭部は、遺体があったところより低い場所で見つかっている。ポンペイが初めて発掘されたのは1740年代。その後、掘られた地下道が崩れ、遺体の頭部が流されたと考えられている。

 18世紀と比べ、現在の発掘技術ははるかに向上している。例えば、ポンペイ北部にある発掘場レッジョ5は、発掘が始まってからまだ日が浅いため、さらなる発見が見込まれる。現場の発掘責任者がイタリアの通信社に語った話によると、レーザーやドローン、VR(仮想現実)映像技術などの最新技術も駆使されるそうだ。(参考記事:「2000年前の美女の肖像を復元、ベスビオ火山で埋没」

 ベスビオ火山の噴火を再現することはできないが、今回明らかになったことから、この不運な男性が火山を見上げたときに目にした光景を思い描くことはできる。「山頂付近から大きく不気味な雲が下へと下りて迫ってくる様子を想像してください」とアンドルーズ氏は言う。それこそ、この男性が最期の瞬間に見たものだろう。

【動画】ポンペイの遺跡を調べれば、ローマ帝国時代の暮らしの詳細がわかる。新たな調査があるごとに謎が解明されていく。(解説は英語です)

文=ERIN BLAKEMORE/訳=潮裕子

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