竹を食べる、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地の若いパンダ。現在のパンダは涼しくて湿った気候を好む。(PHOTOGRAPH BY JAK WONDERLY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
[画像をタップでギャラリー表示]

 2014年8月、古人類学者の張穎奇(チャンインチィ)氏率いる研究チームは、史上最大の霊長類であるギガントピテクスの手がかりを求めて、ベトナムに近い中国南部の陥没穴に調査に入った。彼らは、この自然の落とし穴に落下したさまざまな動物たちの骨を採取して持ち帰った。(参考記事:「類人猿ギガントピテクス、大きすぎて絶滅していた」

 その中にギガントピテクスの骨はなかったものの、研究チームを驚かせる発見が待っていた。2万2000年前のジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の下顎が混ざっていたのだ。さらにその顎の化石には、世界最古のパンダのDNAが残っていたことが、6月18日付けの学術誌「Current Biology」で明らかにされた。

2万2000年前に生きていたジャイアントパンダの顎の化石。(PHOTOGRAPH BY YINGQI ZHANG AND YONG XU)
[画像をタップでギャラリー表示]

 この遺伝的な証拠は、下顎の持ち主が現在のジャイアントパンダの多様性の中に収まらず、18万3000年前に別の道を歩み始めていたことを示している。

 論文の著者らは、このパンダが亜熱帯での暮らしに適応していた可能性があり、かつてはジャイアントパンダがはるかに多様な環境に適応していたことを示している、と結論づけた。(参考記事:「パンダを野生の森へ」

 パンダの多様性に関するこうした推論はさほど目新しくはない。だが、状態のよくない化石から古代のDNAを抽出するという成果はすばらしいものだと、米アイオワ大学の古人類学者、ラッセル・ショホーン氏は言う。(参考記事:「南太平洋の島で謎の石器を発見、現生人類の到達前」

「わたしたちは気温の高い土地で、しかもかなり古い骨から古代のDNAを入手するという可能性を開きました」と、論文の共著者で、サンプルの遺伝分析を担当した遺伝学者の付巧妹(フー・キアオメイ)氏は述べている。(参考記事:「4代前にネアンデルタール人の親、初期人類で判明」

次ページ:「極めて特別な情報です」