【動画】謎多きアオウミガメを守れ、科学者の闘い

世界で最も謎が多い個体群の1つ、ペルシャ湾のアオウミガメ、生息数も不明

2018.06.20
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ペルシャ湾に生息する謎多きアオウミガメたちを、科学者たちが追跡する。

 ウエットスーツに身を包んだ彼女は、グローブをはめた手で天幕につかまり、船べりに立っている。エメラルド色の水の中に何ものかの影が現れ、勢いよく通り過ぎようとした。

 この女性、ヒメナ・ロドリゲス氏は、アラブ首長国連邦(UAE)にあるエミレーツ・ワイルドライフ・ソサエティの海洋生物学者だ。太陽が照りつけるペルシャ湾の浅瀬、アブダビから80キロほど離れたブ・ティナ島の沖で、船は波を切って進んでいた。彼女はひざを曲げ、うねりに合わせて体を上下させている。「待て……待て……待て」と後ろでつぶやいていた船長であり科学者でもあるニコラス・ピルチャー氏が、ついに叫んだ。「今だ!」

 ロドリゲス氏はデッキから水中に飛び込むと、巨大なアオウミガメ(Chelonia mydas)の甲羅をつかみながら、数秒のうちに水面に浮上した。午後には彼女の同僚の研究者たちが、ウミガメの健康チェックをし、体を計測し、追跡装置を取り付ける。これで、中東の海を渡っていくアオウミガメの動きを追うことができる。(参考記事:「【動画】赤ちゃんウミガメの体力測定、光害研究で」

 アオウミガメの生息範囲は広い。このカメは南アフリカからガラパゴス諸島まで、あるいは日本からカナダの一部までなど、世界中の熱帯から温帯の海域にすんでいる。だが、中東に広がるこの穏やかな海域ほど、彼らの生態がわかっていない場所はない。しかも、この地域の変化のスピードはすさまじい。

【参考ギャラリー】世界のウミガメ 写真14点(写真クリックでギャラリーページへ)
海に帰るアオウミガメの赤ちゃん。(Photograph by Norbert Wu, Minden Pictures, National Geographic Creative)

 そうしたわけで2018年の3月、ブ・ティナ島の小さな砂嘴の近くで、研究者たちの国際チームは何十という数のアオウミガメを捕獲したのだった。ここはウミガメたちが、産卵の前に海草をたらふく食べにやってくる場所だ。研究者たちが知りたいのはいくつかの基本的なことだ。アオウミガメはどこで産卵するのか? 生息数はどのぐらいか? どうやったら彼らを保護できるのか?

「長期的な傾向を知るには、データが必要です」と、3月の調査を率い、マレーシアでウミガメ調査団体を運営するピルチャー氏は言う。「とにかくデータがありません。ブラックボックスです」

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