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 モンゴルでは今、「ミレニアル世代」の僧侶たちが寺院を担い、中心となってチベット仏教を存続している。(参考記事:「チベット文化圏、大地に息づく『祈り』7点」

 社会主義後に生まれた世代が大人になっている。社会主義時代、モンゴルではチベット仏教は弾圧され、僧侶の数は激減した。1930年代に実施された社会主義政策で、同国では約1万7000人の僧侶が殺された。1924年には約10万人いた僧は、1990年には110人にまで減少。1250カ所以上の寺院が破壊された。

 1992年に社会主義を放棄して以来、かつてモンゴルで広く信仰されていたチベット仏教が息を吹き返した。それでも、過去の抑圧を知る世代が多いこともあり、チベット仏教は難題に直面している。(参考記事:「そうだったのかナショナル ジオグラフィック 第26回 トルストイとダライ・ラマとナショジオの意外な縁」

 モンゴル北部、セレンゲ県にあるチベット仏教の寺院、アマルバヤスガラント寺。雑然としつつもりっぱなこの寺院で、現在40人の僧侶が寝起きし経を唱え、仏教の教えを学ぶ。社会主義時代が始まる以前は、800人からなる僧侶がここで暮らしていた。

 40堂あった建物も今では28しか残っていない。この史跡を保存するためにユネスコは資金を提供し、修復作業を1980年代末に開始した。

 現代において僧侶として生きる道を選ぶ若者を探し出すのは、難しいだろう。だがアマルバヤスガラント寺の僧侶たちは、寺院が後世にまで残るようにと一途に信仰を守る。そうして人に教えを伝え、迎え入れて、仲間を増やしていくのだ。

 ロブサン・タヤンは同寺院で暮らす29歳の僧侶だ。僧になるべく4年前から学び始めた彼は、今では2人の若い僧に教えを説く。4年学んだだけで説教をしているいうのは、極めて異例なことだ。以前なら、教えを学び実践し始めてから20年経過しなければ、師として教える立場にはなれなかったからだ。

「自分でも知識が足りないと思います」と、タヤン氏はロイター通信の取材に答えた。「『学んでいる最中の私に、師と呼ばれる資格があるのだろうか』と自分でも不安になります」。

 それでもタヤン氏は、僧侶の生活が彼の世代だけでなく、後世まで存続するのを切に願っている。

チベット文化圏、大地に息づく『祈り』7点(画像クリックでギャラリーへ)
中国・四川省・ラルンガル  チベット文化圏内で最大規模を誇る僧院。1万を超す僧房が丘を埋め尽くす。(Photograph by Uruma Takezawa)

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