【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚

プラスチックごみが約8キロも、救助しても餌食べられず、タイ

2018.06.07
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タイで、衰弱した状態で発見されたクジラ。その胃の中には80枚のレジ袋やその他のプラスチックごみが詰まっていた。そのため、クジラはエサが食べられなくて餓死した。(解説は英語です)

 2018年5月、マレーシアとの国境に近いタイの運河で、衰弱したゴンドウクジラのオスが発見された。泳ぐことができず、呼吸も苦しそうだった。救助隊は、獣医が手当てできるようにブイでクジラの体を浮かせ、太陽光線から肌を守るために赤い傘をさした。

 クジラは5枚のビニール袋を吐き出したが、救助から5日後に死亡した。

 解剖の結果、胃の中からは80枚のレジ袋など、8キロ近いプラスチックごみが出てきた。これが胃に詰まり、エサを食べられなかったとみられる。(参考記事:「座礁したクジラの胃から自動車部品」

 クジラとイルカの保護に取り組む「ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーション」北米活動部長のレジーナ・アスムティス・シルビア氏は、海を汚染している深刻なプラスチックごみの問題を象徴する出来事だと語る。

「浜に打ち上げられず、同じように死んでいる海洋生物がどれくらいいるかわかりません。今回はゴンドウクジラ1頭でしたが、ほかの生きものはどうでしょう。非常に深刻な問題を象徴しています」(参考記事:「忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実」

有害な食べ物

 専門家たちによると、クジラはビニール袋を食べ物と勘違いしたのだろうという。胃にプラスチックごみが溜まり、クジラは満腹になったと思い込んで、食欲を失う。その結果栄養不足に陥り、衰弱して、エサを探せなくなった。

「胃の中がごみでいっぱいになってしまうと、本物の食べ物が食べられなくなってしまいます。消化管が完全に塞がり、栄養を摂取できません」

 ゴンドウクジラは普段はイカを食べるが、イカが見つからなければタコやその他の小魚も食べる。(参考記事:「ゴンドウクジラは“深海のチーター”」

 プラスチック汚染は、世界中の海で問題になっている。タイの海では、ゴンドウクジラをはじめ、ウミガメやイルカなど毎年300頭以上の海洋生物がプラスチックを食べて死んでいるという。4月には、スペインの浜でやせ細ったマッコウクジラの死体が見つかった。その消化器官には27キロものごみが詰まっていた。この5月25日には、タテゴトアザラシの子どもの死体が英国スコットランド北西部の離島の浜に打ち上げられたが、その胃からもやはりプラスチックの薄いシートが見つかった。アザラシがプラスチックを食べるケースはかなり珍しい。(参考記事:「死んだ子アザラシの胃からプラスチック」

【参考ギャラリー】美しさと驚異に満ちたクジラの世界(画像クリックでギャラリーページへ)
ハワイ、コナ島沖で泳ぐゴンドウクジラ。ゴンドウクジラの群れの後を、サメが追っていることもある。食べ残しにあやかれるからだろう。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

プラスチック・クライシス

 タイの英字紙バンコク・ポストは5月、プラスチックの消費と環境汚染を減らすため、タイ政府がレジ袋に課税することを検討していると報じた。タイでは、2017年のごみの量が2740万トンで、そのうち200万トンがプラスチック類だった。(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」

 世界の海には、毎年800万トンを超えるプラスチックごみが流れ出ている。米国人は、1人当たり平均して年間84キロのプラスチックを捨てているが、ちょっとしたことに気を付けるだけでその数字を減らすことができる。レジ袋やペットボトル、ストローを使わず、プラスチック容器に入った商品を買わないようにする。リサイクルも大切だ。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」

 クジラは「海の庭師」のような存在で、植物プランクトンが多い海面近くの生態系に、排泄物という肥料を与える重要な役割を担っていると、アスムティス・シルビア氏は語る。クジラを死なせれば、生態系全体に影響がおよび、結果的には人間が傷つくことになる。海を汚染すれば、人間が食べる魚が汚染され、人間もプラスチックを摂取することになりかねない。

「今回の件は、私たち人類への警鐘とするべきです。自分で自分の首を絞めるようなことはやめなければなりません」

文=Elaina Zachos/訳=ルーバー荒井ハンナ

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