死んだ子アザラシの胃からプラスチック

薄いプラスチックフィルムが病気のアザラシの腸を塞ぎ、死期を早めた?

2018.06.06
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流氷の上で休むアザラシの子。カナダ、セントローレンス湾(Photograph by David Doubilet, National Geographic Creative)
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 小さなプラスチック片が動物の命を奪う決定打となったようだ。

 2018年5月25日、英国スコットランド北西部のスカイ島で、死んだタテゴトアザラシの子が発見され、海洋動物の大量死を調査する政府系組織、スコットランド海洋動物座礁調査機構(SMASS)に運び込まれた。死体を解剖した獣医病理学者のアンドルー・ブラウンロウ氏は、小さなプラスチックフィルムを胃から取り出し、5月30日にこの事例についてSMASSのフェイスブックに投稿した。

 死んだアザラシは生後8カ月から1歳と考えられている。ブラウンロウ氏によれば、アザラシの胃からプラスチックが見つかることは珍しい。アザラシは、漁網、釣糸、ルアーなどが絡まって命を落とすことがあっても、海中に浮遊する小さなプラスチック片を誤飲するケースはあまりない。

「知能が高い動物は、プラスチックと獲物を見分けられるようです」と、SMASSの代表でもあるブラウンロウ氏は説明する。今回の出来事は、プラスチック海洋汚染の広がりを印象づけるものだ。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」

病気のアザラシの死期を早めた

 スコットランドでよく見かけるハイイロアザラシやゼニガタアザラシが岸に打ち上げられてSMASSに報告されることは多い。しかし、通常、北極地方に生息しているタテゴトアザラシが見つかることはまれである。

「すぐにハイイロアザラシではないとわかりましたよ」とブラウンロウ氏。「死体解剖では、動物がどうして死んだかだけでなく、どのように生活していたかも調べるようにしています」

 タテゴトアザラシは絶滅危惧種ではない。北大西洋や北極海の氷の海を泳いで生活し、魚や甲殻類をエサにしている。毎年、繁殖場所であるカナダのニューファンドランド島やグリーンランド海、ロシア北西部の白海に戻る。

 ブラウンロウ氏によれば、生息域からはるか南のスコットランドでタテゴトアザラシが見つかることは珍しいが、あり得なくはないという。子アザラシは獲物やほかのアザラシを追っていたのかもしれないし、迷子になったのかもしれない。いずれにしても、ノルウェー北部から、何らかの理由で南に向かった。気候変動も一因となった可能性があると、同氏はフェイスブックに書いている。

 死体解剖の間、ブラウンロウ氏とチームの科学者らは、タテゴトアザラシの胃の中でしわくちゃの1辺約5センチの薄いプラスチックフィルムを見つけた。胃がわずかに潰瘍化していることから、しばらくの間、その場所にフィルムが付着していたと見られる。このフィルムが、胃から腸につながる部分を塞ぎ、食物を腸に送れなかった可能性がある。腸にも炎症が見られた。

 ただし、腸を塞いだことが直接の死因ではないだろうと、ブラウンロウ氏は書き加えている。アザラシには、脱水症状や衰弱した後も見られ、すでに病気にかかり、何も食べていなかったことを示していたからだ。

 ブラウンロウ氏は、プラスチックが胃の組織を傷つけて、細菌が血流に流れ込んだのだろうと述べている。いずれにしても、この子アザラシは長生きできなかっただろうが、プラスチック片が死期を早めた可能性がある。

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