ネッシーにチェックメイト! 環境DNA分析を開始

「いないことの証明」が可能な最新の科学的手法とは

2018.05.25
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 環境DNA分析からは、すでに数々の大発見が生まれている。2011年には、アジア産のコイのDNAがシカゴ周辺の運河で確認され、侵略的外来魚が五大湖まで広がろうとしていることが明らかになった。2016年には生物学者がカタール沖の海水を採取し、ジンベエザメの巨大な群れの集団遺伝学的研究を行った。2017年には、スペイン、ロシア、ベルギーの洞窟の土からネアンデルタール人のDNAが単離されたという発表もあった。(参考記事:「絶滅危惧種ジンベエザメがアフリカの島に「定住」」

 そして現在、ナショナル ジオグラフィック協会のチームは、1930年代に行方不明になった米国の女性飛行士アメリア・イアハートが不時着して死亡したと考えられている南太平洋のニクマロロ島で、採集した土から環境DNAを抽出し、彼女のDNAが含まれていないか確認しようとしている。(参考記事:「伝説の女性飛行士遭難の謎、異説が浮上」

環境DNAとネッシー

 ネッシーがすんでいるとされるネス湖は、スコットランド北部の深い淡水湖で、1万年以上前に氷河の作用によって形成されたと考えられている。この湖で未確認動物を目撃したという証言が何十年も前から相次いているが、科学者たちは、首の長い大型爬虫類という典型的なネッシーの姿から考えて、本物とは考えられず、でっち上げだとしている。(参考記事:「ペットのイヌがクマに変身? ウソのような話の真実」

 一部の未確認動物学者は、ネッシーは首長竜だと主張してきた。首長竜は恐竜時代に生息していた海生爬虫類だが、化石記録から、今日の鳥類につながる種以外の恐竜と同様、6600万年前には絶滅していたことが強く示唆されている。(参考記事:「世間を欺いた6つの科学イカサマ」

 たとえ首長竜が今日まで生き残っていたとしても、ネス湖にすむのは難しいだろう。生態学的研究から、ネス湖には体重約900キロの首長竜の繁殖集団が生きられるほど餌になる魚がいないことがわかっているからだ。

 ネッシーの目撃例のいくつかは、たまたま迷い込んできたチョウザメか、だれかが放流したヨーロッパオオナマズだったのではないかと言う人もいるが、どちらの魚もネス湖で捕獲されたことはない。

 ネス湖プロジェクトを率いるエイドリアン・シャイン氏は、「The Skeptic」誌へのメールで、「ネス湖では、私のお気に入りのチョウザメがいる証拠も、ヨーロッパオオナマズがいる証拠も見つかっていません」と説明している。「チョウザメ説もヨーロッパナマズ説も、ネス湖に不思議な生物がいる可能性が小さくなり、魚に注目が集まる中で出てきたものです」と言う。(参考記事:「なぜ人は嘘をつく?」

ネッシーが見つからなかったら環境DNAプロジェクトは無駄になるのか?

 そんなことはない。ジェメル氏の研究からはネス湖全体の生態系の遺伝子プロフィールが得られる。そこからなにが見つかるにせよ、環境DNA分析は便利なものだ。たとえば近年、侵略的外来種のサケがネス湖に入り、在来種を脅かしているが、環境DNAは、その監視に役立つだろう。

 急速に発展する科学の分野で、世間に広く知られることは非常に重要だ。テイラー氏は2017年に、「自分が所属する研究室の主宰者がネッシー探しに参加することに、私は疑問を感じていました」と記している。「けれどもその後、環境DNAのすばらしい可能性を宣伝するのにうってつけのやり方であることに気づきました」

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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