両生類を襲うカエルツボカビ、朝鮮半島原産と判明

「生物多様性にとって史上最悪の病原体」、234個のゲノムを比較

2018.05.14
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研究者が死骸を集めて整然と並べると、その犠牲の多さは一目瞭然だ。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW FISHER)
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 オハンロン氏とフィッシャー氏らの研究チームは、世界中から集めた177のBdのゲノムを解析。すでに発表されている57の配列と合わせて検討した。合計234のゲノムを比較してBdの系統図を描くと、特徴的な系統が4つあることがわかった。

 なかでも朝鮮半島のサンプルは、Bdを採取したほかのどの地点よりも大きな遺伝的多様性を示していた。つまり、ここがBdの「震源地」だろうということだ。さらに、Bdの変異率を割り出すと、現在のBdGPLの祖先は20世紀初めにアジアで現れたことが判明した。1950年代に世界中に「輸出」されるまで、この真菌は地域の動物相と平和に共存していた。

 研究者たちは、感染した両生類が人間の活動によって世界に広まったと仮説を立てている。かつて盛んに行われた、生きたカエルを使った妊娠検査や、食用の両生類の肉、ペット産業などのために船で運ばれたせいかもしれないし、朝鮮戦争のような大きな出来事のせいかもしれない。朝鮮戦争の真っただ中には、数百万の兵士や大量の装備がこの地域を出入りした。そこに両生類が入り込む機会は十分あっただろう。

 現在、貿易に関して国際的な規約があるにもかかわらず、世界規模のペット取引がBdを拡大させ続けているのは明らかだ。研究チームのメンバーが、ベルギー、英国、米国、メキシコのペットショップや市場をしらみつぶしに探すと、感染したカエルやヒキガエルが見つかった。既知のBdの系統が全て検出され、なかには致死性のBdGPLもあった。

新たなツボカビ病原菌も

 Bdにむしばまれた両生類は、局所投与の抗真菌薬で治すことができ、この方法は野生でも試行され成功している。しかし現時点では、世界規模で野生の個体群を回復させることはできない。差し当たっては、Bdのこれ以上の拡散を防ぐのがベストな選択肢だと研究者は言う。しかし、今ではBd以外にも強力な真菌が出現しており、ツボカビ症を食い止めるのは非常に困難な状況だ。

 2013年、イモリツボカビ(B. salamandrivorans)という真菌が確認された。Bdの近縁で、略してBsalと呼ばれる。何らかの理由で両生類の1グループである「サラマンダーを滅ぼす」ことが名前の由来だ。2009年から2012年にかけて、この真菌はオランダに生息するファイアサラマンダーの個体数を99%以上も激減させた。(参考記事:「サラマンダーを襲うアジア産の真菌」

 2016年、米国の野生生物当局は、サラマンダー類201種の輸入を禁止した。Bsalを国内に入れないための措置だった。しかし、2017年に出た控訴裁判所の判決で、これらのサラマンダーが禁輸の発効以前にもう米国に入っていたのなら、各州間の輸送は合法のままだという判断が示された。

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