両生類を襲うカエルツボカビ、朝鮮半島原産と判明

「生物多様性にとって史上最悪の病原体」、234個のゲノムを比較

2018.05.14
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Bdによって、フランスのピレネー山脈にいたサンバガエルは個体数が激減した。この地域のBdの拡大を研究する英インペリアル・カレッジ・ロンドンの菌類学者、マット・フィッシャー氏は、「カエルたちは生涯最後のジャンプをしますが、拾い上げると、間もなく手の中で力尽きてしまいます」と語る。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW FISHER)
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カエルの死体のじゅうたん

 略して「Bd」と呼ばれるカエルツボカビが恐ろしいのは、両生類の透過性が高い皮膚を標的にするからだ。両生類は、皮膚から酸素や水分を吸収する。Bdは、両生類の皮膚に含まれるたんぱく質ケラチンを利用して成長し、皮膚呼吸や体内の浸透圧の調整を阻害すると考えられている。感染した両生類は次第に無気力になり、皮膚がはがれ落ちて、数週間でみるみる弱って心不全で死ぬ。Bdに耐性のある両生類もいるが、感染する可能性のある種は少なくとも695種に上る。

 米メリーランド大学の生物学者で、両生類の減少に詳しいカレン・リップス氏は、「これほど幅広い種への影響が見られる病気は、かなり珍しいです」と話す。同氏は、今回の研究には関わっていない。

 Bdのまん延は、聖書にあるような大災害を思わせる。毎年8月、フランスのピレネー山脈に生息するサンバガエルは成体になり、生まれた湖から初めて上がる。感染したカエルは、岸に上がるのがやっとだ。論文の共著者の1人であるフィッシャー氏は、「カエルたちは生涯最後のジャンプをしますが、拾い上げると、間もなく手の中で力尽きてしまいます」と語る。「湖岸を歩いてみればわかります。まるでカエルの死体のじゅうたんが広がっているような光景ですから」

 同様の大量死が起こり始めたのは1970年代だが、こうした「謎の減少」が地球規模の現象だと研究者たちが認識したのは1990年代になってからだ。1997年に研究者が初めてBdに関して述べると、10年のうちに大量死と関連づけられた。その間もBdの猛威は止まなかった。パナマのある地点では、2004年から2008年にかけ、現地の両生類の種のうち41%がBdによって失われた。

 かつて原因不明とされていた両生類の大量死の多くが、今ではカエルツボカビの一系統で、致死性の高い高病原性系統(BdGPL)によるものとされている。しかし、この強力な系統はどこから来たのだろう? そして、いつ、どうやって世界中に広がったのだろうか?

カエルツボカビの遺伝情報の「図書館」

 それを解明しようと、研究者たちは10年を費やして、世界中のBdの遺伝情報を集めたライブラリーを作り上げた。このために科学者たちは6大陸を回った。今回の論文著者の1人で、ナショナル ジオグラフィック協会からヤング・エクスプローラーとして支援を受けているジェニファー・シェルトン氏は、2017年に台湾の山々をめぐり、感染したサンショウウオを探した。

 弱った両生類を見つけると、研究者はまず、その個体の足の指を1本切り取った。死なせることなく組織を集める方法だ。次いで、切断した指からBdを分離し、ペトリ皿で培養して、DNA配列を解析した。

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