人生とは、数々の選択の結果である。進学、就職、人間関係。1つ1つ順番に決定し、それが積み重なって現在の場所にいる。だとすれば、そこへ至るまでの道のりを地図のようにも表せるだろう。

 変化を重ねる細胞もまた、自らの運命を同じように決定している。

 米ハーバード大学医学大学院のシステム生物学准教授であるショーン・メガソン氏と、同大学院の2つの研究チームは、ゼブラフィッシュとカエルの受精卵を約24時間観察し、無数の細胞を1つ1つ追跡して、それらがなぜ、どうやって特殊化された組織に発達するのかを調べた。これら3つの研究は、4月27日付けの学術誌「サイエンス」に発表された。(参考記事:「【動画】生きた細胞内の高精細3D映像化に成功」

「発達する各段階で、異なる種類の細胞が作られていく過程は、子どもの成長に似ています。5歳児には、将来何にでもなれる可能性がありますよね」と、メガソン氏は説明する。同様に、地球上のほとんどの生物は、受精卵という1個の細胞から始まり、それが分裂してさまざまな器官に成長し、複雑な生物の体を形成する。(参考記事:「ヒトの精子のしっぽに謎のらせん構造、初の発見」

「ある細胞は、ある一連の決断を下して神経細胞になり、別の細胞は別の決断を下して筋肉になります」とメガソン氏。しかし、これらの細胞がどうやって決断を下しているのかは、まだ解明されていない。

カエルの胚の細胞分裂(Video: Enrique Amaya)

ばらばらだった研究

 ただし、多細胞生物は、進化の歴史のなかで見ればまだ若い。最初に地球上に出現したのはおよそ10億年前、大型の多細胞生物が増え始めたのは約6億年前である。多細胞生物の祖先である単細胞生物は、少なくとも35億年前には登場していた。多細胞生物がどのように生まれたはいまだに謎だが、ある時点で単細胞が分裂を始め、やがて複雑な生物へと成長した。(参考記事:「5.7億年前、生物たちはなぜ複雑になったのか」

「1日目は、ただ分裂を繰り返すだけです。1日の終わりには、丸い球のような細胞のかたまりになります」。メガソン氏は続ける。「けれども、翌朝再び見てみると、球は小さな魚に変わっています。目がついて、鼓動する心臓があります。筋肉もつき、尾を振ることができます」

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