2015年以降、絵文字の肌はデフォルトの黄色のほかに5つの色(合計6色)から選べるようになった。(PHOTOGRAPH BY ARNO BURGI, PICTURE-ALLIANCE/DPA/AP)
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 2010年、絵文字がユニコードコンソーシアムに正式に認められたとき、顔の色は黄色だけだった。その後2015年には肌の色を増やせるようになり、今では黄色以外に「ペールホワイト」(白)や「ダーケストブラウン」(暗褐色)まで、肌の色は6色から選べる。

 絵文字の肌の色を選べるようにしようという提案に、当初は反対する声も上がった。ソーシャルメディアで悪用され、人種差別を誘発するというのがその根拠だ。一方、利用者の肌の色と同じ色の絵文字がほしいという意見もあった。

 最新の研究によれば、ソーシャルメディア上で絵文字の肌の色を悪用する例はほとんどなく、色を増やしたことは、デジタル世界における多様性の受け入れにつながっているようだ。

 ナショナル ジオグラフィック誌の編集者で、文化担当のデブラ・アダムズ・シモンズ氏は「利用者が自分の姿を表すのに絵文字やアバターを使うのはもっともなことです」と言う。シモンズ氏は歴史学者、ジャーナリスト、写真家たちといっしょに、人種に焦点を当てた2018年4月号の特集記事を編集した。(参考記事:「本誌2018年4月号 人種と遺伝子」

肌の色の研究

 10億件のTwitterの投稿を調べた英エディンバラ大学の研究によると、絵文字の肌の色を変えた人のほとんどが、自分の肌に近い色を選んでいたことがわかった。また、肌の色が明るい人に比べ、肌の色が暗い人のほうが絵文字を変えることが多いことも判明した。アイデンティティーはネットでも表現することが重要だと、人々が考えていることを示したものと研究者は見ている。中には、自分の肌の色と違う色を絵文字に使う利用者もいたが、彼らのツイートの内容のほとんどが肯定的なもので、ネガティブな投稿は少なかった。

 米ピュー研究所の調査では、Twitterの利用者は白人が多いが、黒人の方が投稿回数が多いことが判明している。また白人は絵文字の肌の色を白にする人が少ない。これは「デフォルトの黄色の絵文字が自分たちだと考えているからではないか」と、絵文字を研究する言語学者タイラー・シュヌーベレン氏は雑誌「Atlantic」で分析している。

 エディンバラ大学の研究では、世界の多くの地域で、一番暗い色は絵文字に一番利用されないことがわかった。これは、開発途上国ではネットにアクセスしにくいことが原因だろう。

 研究に参加した情報学部のワリド・マグディー氏はプレスリリースで、「肌の色が絵文字で選べるようになったことは、多様性の観点で大きな成果です。また、実際に多くの利用者が絵文字の肌の色を選んで使っていることから、この機能は本当に利用者から求められていたことがわかります」と述べている。

色とりどりの世界

 ナショナル ジオグラフィックには、写真家のアンジェリカ・ダス氏が4000人を撮影し、パントンの色見本と対比させた作品が掲載されている。「Humanae」と名づけられたこのプロジェクトでは、18カ国の人々を撮影。世界は黒と白だけではないことがよくわかる。(参考写真:米国のナショジオ サイト

 記事を編集したシモンズ氏は「驚くことではありませんが」と前置きした上で、「絵文字で肌の色を選ぶ行為は、自分が何者だと考えているかを示すものだと思います」と語った。

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