【動画】餌をめぐるハクトウワシの争いをとらえたスローモーション映像。(解説は英語です)

 威厳あふれる米国の国鳥ハクトウワシは、驚くほど喧嘩っ早いところがある。縄張り争いで空中戦を繰り広げる一方で、魚の切れ端をめぐって鋭いかぎ爪を振るうこともある。写真家クリスチャン・ザッセが、米アラスカ州アリューシャン列島東部のダッチ・ハーバーでこのほど、ハクトウワシが争っている光景をスローモーションで撮影した。(参考記事:「素顔のハクトウワシ」

 動画を見ると、まだら模様のある若いワシが鳥の群れに向かって急降下し、のどかに魚をついばんでいた成鳥に体当たりを食らわせた。不意をつかれた成鳥は後ろに押し倒され、あわや水中に沈みそうになるが、どうにか体勢を立て直す。

「若いワシのかぎ爪が、すんでのところで成鳥の目に届くところでした。どうりで、目に傷を負ったワシを見かけるはずです」と、ザッセ氏は話す。このような激しい格闘の帰結として、くちばしが欠け、脚に傷を負い、顔に深い切り傷を残すワシも多い。

「このような争いは、1秒も経たないうちに終わります」。今回の場合は「どちらのワシも傷を負わず、餌をめぐる騒動はすぐに終わりました」(参考記事:「【動画】チーターの獲物を横取りするハゲワシ集団」

一瞬で終わる争いをじっくりと観察

 2018年2月にザッセ氏がダッチ・ハーバーに向かったのは、ワシの写真を撮りたかったからだ。人口4500人ほどのこの漁村には、通常1000羽近くのワシが群れをなす。(参考記事:「ワシの背中にカラスが! なぜこんなことに?」

「アリューシャン列島の気候は寒く厳しいので、ここにいるワシは体が大きい。また、人にもよく慣れています」と、ザッセ氏は話す。「車の上に舞い降りることもあれば、自分のすぐ隣に降り立つこともあります」

【参考ギャラリー】あなたの知らない驚きのワシとタカ 写真19点

 いつもなら横殴りの雨に降られ、風に鞭打たれるところだが、ザッセ氏の滞在中に天気に恵まれる時が訪れた。これなら申し分のない映像が撮れそうだ、と彼は地面に横たわった。ちょうどその時、若いワシが殴り込みをかけてきたので、首尾よく今回の動画を収めることができた。(参考記事:「鳥もビックリ、ドローンで撮った地球の絶景12点」

 ザッセ氏によると、このように一瞬で終わる壮絶な闘いをスローモーションの映像に収めるのは難しい。こうした映像があると、ワシの飛行を流体力学と空力弾性学を用いて物理的に解明する手がかりになるという。

「静止画や、現実に流れた時間通りの動画で見ても、何が起こっているのかまるでわかりません」と、物理学の素養があり、スローモーションとタイムラプス(微速度撮影)を好むザッセ氏は語る。

「羽毛は目に見えない空気の流れに対し流線形を保っており、どの羽も独自の役割を持ち、それを極微に至るまで高度に組み合わせ、適切に連携させて、飛行システムとして機能させているようです」(参考記事:「【動画】渡り鳥が目の前! 一緒に空飛ぶ絶景映像」

オスより偉いメス

 環境保護団体オーデュボン・アラスカの常任理事ニルズ・ウォーノック氏は、この動画について、「縄張りを守ろうとする典型的なワシの行動です。ワシの種の多くが、猟場と餌を守ります」と説明する。「立ちはだかったり、翼を羽ばたく行動をとるのは、自分の体を大きく見せ、地盤を確保しようとしているからです。体の大きさと飢えのレベルで、支配力は決定されます」

 動画の中で攻撃をしかけたワシはメスだろう、とザッセ氏は推測する。理由は、このワシが若いからだ。成鳥であれば頭部は白い。また他の猛禽と同じく、ワシの体はメスのほうが大きい。(参考記事:「【動画】ワシとコブラの一騎打ち、勝ったのは?」

 メスは支配力が強く、高い地位を求めて互いに争う。一方で体の小さいオスは、やきもきしながらも相手の隙をうかがい、餌の切れ端をかすめ取る。つまり、若いオスはとてつもなく腹を空かせていない限り、成鳥に立ち向かわないのだ。

おすすめ関連書籍

写真家だけが知っている 動物たちの物語

美しい写真とともに読む、心に残る60話

定価:本体2,300円+税

文=NADIA DRAKE/訳=潮裕子