衛星で漁船を追跡、なんと海面の55%超で漁業が

地球規模のデータを水産資源の持続可能な管理に役立てる

2018.02.28
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「魚の研究と同じアプローチでは、漁師の考え方を理解することはできません」と話すのは、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋生物学者ダグラス・マコーリー氏(同氏は今回の研究には関与していない)。マコーリー氏は、各国政府による漁業補助金が乱獲の一因になっているのではないかと考えている。世界貿易機関(WTO)では2017年12月、この補助金の禁止を目指す交渉が行われたが、合意には至らなかった。(参考記事:「なぜ日本は問題先送りの漁業補助金を撤廃できないのか」

海洋保護区の設置に役立つ

 この研究は、ナショナル ジオグラフィックのほか、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、カナダのダルハウジー大学、米スタンフォード大学、グローバル・フィンシング・ウォッチ(GFW)の研究者の支援を受けている。GFWは、国際海洋保護団体オセアナと、衛星を用いて地球環境を画像化しているスカイトゥルース、そしてグーグルが協力して立ち上げた非営利組織である。

 カナダ、ブリティッシュコロンビア大学の海洋生物学者ダニエル・ポーリー氏も、「GFWは、違法な漁業との闘いや沖合漁業の透明性の向上に新しい次元をもたらすものです」と評価している(同氏は今回の研究には関与していない)。GFWは、この研究データを公開することで、これまでより簡単に、低コストで海洋保護区を設置できるようになると主張している。

 海洋保護区は、立ち入り禁止区域で安定した数の魚が繁殖できるようにすることで、漁業にとって“銀行”のような役割を果たす。自然保護活動家らは、もっと多く、広い海洋保護区を設置すべきだと長年主張してきたが、業界による反対に遭っている。

「地球規模のデータセットが、意志決定や交渉の透明性の向上に役立ちます」とマジョルガ氏は語る。自然保護活動家らは、漁船があまり訪れておらず、すでに海洋保護区の有力候補といえる地域がどこかを証明できるようになると期待している。(参考記事:「宇宙から見た夜の地球、4年でこれだけ変化した」

持続可能な管理を

「私の最初の職業は漁師でした。それがどんなに大変な仕事かおわかりでしょう」とマコーリー氏は話す。「そのストーリーの一つひとつが、データセットの中に保存されているのです。世界が食糧安全や栄養不足の問題に直面するなかで、漁業の重要性はますます高まっています」

 マコーリー氏は、漁業の補助金を廃止し、より戦略的な規制を地球規模で行うことで、資源を枯渇させることなく、現在の水準の漁獲を維持することができると考えている。「このようなことは、このデータベースが公開されるまでは不可能でした」

 またマジョルガ氏は、漁業において保護措置を実施する場合、説明責任を果たすためにAISの信号が重要な役割を果たすと考える。規制を実施するうえで「最大の問題は、水産資源のトレーサビリティー」だという。「魚が水揚げされたとき、それがどこで捕られたものかを把握できる必要があります。それが持続可能性を確保するための大きな課題です」(参考記事:「南シナ海 枯渇する水産資源」

 マジョルガ氏の次の目標は、小型船も監視、追跡することだという。

文=Sarah Gibbens/訳=山内百合子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加