本州の9割強相当の海洋保護区を設立、セーシェル

外国漁船による密漁対策、2020年には日本の国土以上を目指す

2018.02.26
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
カスリハタという魚が見守る中、「原始の海」プロジェクトのダイバーが海底の調査を行う。セーシェル諸島外縁部の科学調査の際の1コマ。(PHOTOGRAPH BY MANU SAN FÉLIX, NATIONAL GEOGRAPHIC PRISTINE SEAS)
[画像のクリックで拡大表示]

 インド洋に浮かぶ島国セーシェル共和国の政府が、2つの新しい海洋保護区を設立する。その広さは計21万平方キロメートル。これは、日本の本州の9割強に匹敵する広さだ。(参考記事:「よみがえるセーシェル」

 2つの保護区のうち、1つはセーシェル諸島の西の端にあるアルダブラ環礁の周辺約7万4400平方キロで、もう1つは東側の深海域にある約13万6000平方キロだ。2つ合わせると、137万平方キロに及ぶ排他的経済水域(EEZ)の16%にのぼる。しかし、これで終わりではない。セーシェル政府は2020年までに総計41万5000平方キロの海域を保護しようと計画している。これは日本の国土より広い。(参考記事:「米がハワイの海洋保護区を拡大、日本国土の約4倍に」

「セーシェルの海は、世界でもとくに美しい海の1つです。政府がその海を保護することは、よろこばしいこと以外の何ものでもありません」。そう述べるのは、2015年に行われたセーシェルでのナショナル ジオグラフィック「原始の海」調査チームを率いたポール・ローズ氏だ。

 この「原始の海」プロジェクトの研究成果は、セーシェル政府が海洋保護区を設立するために必要な科学的根拠として役だった。また、自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシーは、レオナルド・ディカプリオ財団をはじめとする民間の資金提供者と協力して国の負債に対する資金援助を行い、今回の海洋保護区の実現に貢献した。(参考記事:「国連が公海の保護条約協議へ、「海洋版パリ協定」」

よみがえるセーシェル 写真12点(写真クリックでギャラリーページへ)
セーシェル諸島のアルダブラ環礁をゆったり泳ぐ、メジロザメ属のツマグロ。(Photographs by Thomas P. Peschak)

にぎやかな生態系を守る

 セーシェル共和国はアフリカ大陸の東の沖合約1600キロに位置する。115の島々からなり、その生態系はにぎやかだ。絶滅の危機に瀕しているジュゴンやウミガメから、このあたりでしか見られない10万頭のゾウガメまで、実に多様な生物たちが暮らす。島は珍しい渡り鳥の営巣地となり、それを取り囲む海域には、マグロやサメが泳ぐ。(参考記事:「【動画】洞窟で涼む熱帯のゾウガメが見つかる」

 新しい保護区はいくつかの絶滅の危機に瀕する海洋生物の聖域になるだろう。同時に、持続可能な漁業や観光業を支えることにもなる。EEZと比べると、セーシェルの国土の面積は極めて小さく、10万人の国民の経済は海洋資源に大きく依存している。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
左:ベンガルフエダイが作りだす鮮やかな渦の中を泳ぐシビレエイの一種。セーシェル諸島の中でもっとも大きいマヘ島沖で撮影。右:セーシェル諸島の外縁部、健全なサンゴ群集の海を泳ぐツマグロ。(PHOTOGRAPH BY MANU SAN FÉLIX, NATIONAL GEOGRAPHIC PRISTINE SEAS)

 白い砂浜と透き通った海で知られるセーシェルには、人の手が加わっていない美しい島国だという印象があるかもしれない。しかしいま、その多様な生態系は脅かされている。外国漁船による違法な漁によってサメやマグロが捕獲され、外部の市場に持ち出す例が後を絶たない。

「今回の海洋保護区の設立が合意に至る前までは、外国の漁船が簡単に航行して乱獲を行うことができました」とローズ氏は話す。

 セーシェルは、気候変動による温暖化や海面上昇にも悩まされている。保護された健全な礁の生態系は、気候変動の効果を和らげ、環境にもよい影響をもたらす。そのため、長い目で見ても、海洋保護区の設立はセーシェルにとって有益だ。

オニカマスは、アルダブラ環礁の海に暮らす多彩な海洋生物たちのひとつだ。(PHOTOGRAPH BY MANU SAN FÉLIX, NATIONAL GEOGRAPHIC PRISTINE SEAS)
[画像のクリックで拡大表示]

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるローズ氏と「原始の海」調査チームは、生態系に対する未だ知られていない脅威について調べるために、2015年にセーシェルで260回に及ぶダイビング調査を行った。実地調査で集めた情報は、海の保護を訴えるための報告書やショートフィルムの作成に使われている。(参考記事:「“絶滅”の陸貝を再発見、セーシェル」

「そういった活動は科学的であるべきです」とローズ氏は話す。「そして、私たちがそのうえで足りないもの、いわばジグソーパズルの欠けた一片を埋めることを約束しました。それがセーシェル政府の決断を後押しすることになりました」(参考記事:「パラオの海洋保護区、その効果が実証される」

 多くの人はいまセーシェルを手つかずの自然が残る観光地と思っている。願わくばこれからもそうであってほしいものだ。

「今回の決定によって、人々のセーシェルに対する印象が強まることになるでしょう」とローズ氏は言う。「保護が必要だということ自体に驚く人も多いかもしれませんね」(参考記事:「フォトギャラリー:息をのむ水中写真 15点」

【動画】洞窟に密集して涼むアルダブラゾウガメ(解説は英語です)

文=Elaina Zachos/訳=鈴木和博

  • このエントリーをはてなブックマークに追加