ゴキブリをゾンビ化する寄生バチの毒を特定

ドーパミンと併存、パーキンソン病の治療に役立つ可能性も

2018.02.14
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【動画】カタツムリを「ゾンビ化」する寄生虫ロイコクロリディウム

「パーキンソン病のような症状の緩和に役立つようなタイプの分子もあるかもしれません」とアダムス氏は言う。「私たちはまだ基本的なメカニズムを理解しようとしている段階です」

 興味深いことに、ハチがゴキブリの体内に卵を産み付けなければ、ゴキブリは1週間ほどで回復する。ゴキブリのゾンビ化状態は、ハチの幼虫が孵化するのに必要な時間だけ続くようだ。(参考記事:「【動画】ルアーで魚を釣り、子どもを寄生させる貝」

「ハチに卵を産み付けさせなければ、ゴキブリは約1週間で回復し、その後はまったく問題ないように見えます」とアダムス氏は言う。

 研究チームは現在、この毒をより多角的に調べた第2の論文を仕上げているところだ。この研究には数年かかり、アンピュレキシンの標的になる細胞についても解明を進める予定である。将来的には、パーキンソン病のような症状をもつ動物モデルも作成するつもりだという。

「寄生バチの毒液の作用は、信じられないくらい不思議なのです」と、米ジョージア大学昆虫学部のポスドク研究員エレン・マーティンソン氏は言う。彼女は今回の研究には関与していないが、アダムス氏らの研究の可能性に大きな期待を寄せている。

毒が患者を救う日

 人間の病気の治療に役立つかもしれないとして研究されている毒はほかにもある。その一つであるマムシの毒は、赤血球を破壊する血液毒だ。

 科学者はすでに、この毒物に含まれるペプチドが、パーキンソン病に伴う細胞死を減らす可能性があることを発見している。

 しかし、新薬は一朝一夕では開発できない。自然毒から医薬品を作るには最低でも10年はかかる。科学者が予備的な臨床試験を始められるようになるまでには、膨大な研究と検証を行う必要がある。(参考記事:「オピオイド依存に悩む米国、貝の毒で新薬開発へ」

「今はまだ模索中です」とマーティンソン氏は言う。「将来の研究のために宝探しをしているところです」

文=ELAINA ZACHOS/訳=三枝小夜子

おすすめ関連書籍

心を操る寄生体

奇怪なメカニズムに迫る

雑誌「ナショナル ジオグラフィック日本版」の好評記事をデジタル化してお届けする「ナショジオ・セレクション」。

定価:本体300円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加