1万年前の「チェダーマン」復元! 肌は黒、目は青

イギリスで発見された人骨を復元、DNAシークエンシング技術で分析

2018.02.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【参考ギャラリー】思わずゾクゾクする考古学フォト13点

太古の遺伝子から色を再現

 トーマス氏によると、研究者たちがチェダーマンの姿をはっきりと認識できたのは、新たなDNAシークエンシング(遺伝子配列の特定)技術によって遺伝子に含まれる大量のデータから復元に必要なものを取捨選択できたおかげだという。

 ナショナル ジオグラフィックのゲノムプロジェクトでサイエンスマネージャーを務めるミゲル・ビラール氏によると、肌の色を決める遺伝子はさまざまな染色体にまたがっている。同氏は今回の修復作業に関与していないが、修復作業を行うには無数の場所に点在するデータを調べる必要があり、以前の技術では、太古のDNAに対してそのような作業を行うのは不可能だったと話す。(参考記事:「人類3種が数万年も共存、デニソワ人研究で判明」

 一方、新たなDNAシークエンシング技術では、点在する染色体の解読が簡単に行えるようになったという。「本に例えると、章全体を調べるのか、一つの単語だけ調べるのか、ということです。現在の技術でば、すべてのパラグラフを解読することができます」

 トーマス氏によると、「目の色を決めるのは、ある特定の遺伝子と、その遺伝子の中にある特定の変異体」だという。「肌の色は、たくさんの変異体によって決まります」(参考記事:「金髪と白い肌、青い目は無関係だった」

 この地域の人々は時間とともに肌の色が薄くなっていったが、その理由や時期についてはわかっていない。

「肌の色が薄ければ、浴びる紫外線が多くなり、生成されるビタミンDも多くなるからでしょう」とビラール氏は推測する。ビタミンDは健康な骨を作るのに欠かせないが、紫外線を浴びることでも生成される。しかし温帯地域では、人が日光を受ける頻度は少なくなるため、多くの紫外線を吸収できるように、肌の色が薄くなったというわけだ。(参考記事:「30年前の議定書が「5分で火傷の世界」を防いだ」

「私の見解では、肌の色についてはそれが最も説得力のある説です」とトーマス氏も同意する。「しかし、この説では目の色は説明できません。何か別のプロセスが起こっているのです。性選択に関わることかもしれませんし、まだ私たちが理解していないことかもしれません」

 2014年の研究で提唱された別の説もある。人間が耕作を始めるようになったことで食生活の多様性が減り、日光からより多くのビタミンDを吸収しなければならなくなったというものだ。なお、現在の食生活では日光を浴びなくてもビタミンDをまかなうことができると彼は付け加える。(参考記事:「黒い肌は皮膚癌を防ぐために進化?」

 トーマス氏によると、今回の復元プロジェクトにとって、肌の色は些細なことでしかないそうだ。現在、研究者たちは、食事の変化や病原体との接触によって、この1万年の間に人口がどう変化してきたのか、幅広い調査を行っている。

「時間とともに変化する遺伝子を測定することができれば、進化の過程をはっきりととらえることができます」(参考記事:「人種の違いは、遺伝学的には大した差ではない」

文=Sarah Gibbens/訳=鈴木和博

  • このエントリーをはてなブックマークに追加