スペースXの最新ロケット、ここがスゴイ

打ち上げ成功!「ファルコンヘビー」が宇宙開発を変えるこれだけの理由

2018.02.06
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【動画】スポーツカーを載せたファルコンヘビーの打ち上げイメージ動画

 打ち上げで爆発しなかったとしても、失敗する要因はほかにもある。ロケットが音速に到達すると、3つ連なったロケットのブースターが予期せぬかたちで振動するかもしれない。衝撃波が重なり合うと、ロケットに致命的な損害が生じることもあり得る。

 テスラ・ロードスターがうまく地球付近を離脱できないことも考えられる。車を火星に近づく軌道に乗せるには、ロケットの上段は6時間にわたってバン・アレン帯と呼ばれる場所を飛ばなければならない。バン・アレン帯には、地球の磁場によって太陽から放出される高エネルギー放射線が閉じこめられている。果たしてロケットはそれに耐えられるだろうか。

 さまざまな不測の事態を鑑みれば、マスク氏が打ち上げを「身がすくむほどの恐怖」と表現するのも納得できる。しかし、5日の記者会見では、マスク氏は落ち着いているように見えた。

「今回の打ち上げはいつもとは違います。いつもなら、前日はストレスでまいってしまうのですが、今回はそうではありません。ミッションを成功させる可能性を最大まで高めるために、できることはすべてやってきたという自信があります」。マスク氏はそう述べている。(参考記事:「ハイフンの見落としで打ち上げ失敗… NASAの教訓」

再利用によるコスト削減

 ファルコンヘビーの打ち上げが成功すれば、民間企業の宇宙進出は大きく前進する。スペースX社は、ロケットの再利用という構想を掲げて宇宙開拓に革命をもたらしてきた。

2017年12月、バンデンバーグ空軍基地から打ち上げられたスペースX社のファルコン9ロケット。その軌跡は、カリフォルニアの空に奇妙な形の雲を描いた。(PHOTOGRAPH FROM SPACE X)
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 ほとんどのロケットは複数の段に分かれており、その力で人工衛星や乗員カプセルなどの積載物を宇宙に運んでいる。通常、各段は燃料がなくなると切り離されて地球に落下する。多くの場合、これを安全に再利用することはできなかった。(参考記事:「【動画】潜入ルポ、ソ連のスペースシャトル」

 しかし、スペースX社は2008年以降、ファルコン9ロケットによって数々の「宇宙飛行初」を成し遂げてきた。その中の一つが、ロケットの段の回収と再利用だ。すなわち、航空会社がフライトのたびに新しい飛行機を作っていないように、打ち上げのたびに新しいロケットを作らないようにしようということだ。ロケットの再利用は、宇宙旅行のコストダウンの鍵となる。

 ファルコンヘビーは、大まかに言うとファルコン9ロケットを3基つなぎあわせたロケットだ。スペースX社は、3基すべての第1段目を回収したいと考えている。計画どおりにいけば、左右の2基のブースターは分離して地上の着陸地点に戻ってくる。実際、この左右のブースターは、以前に打ち上げられたファルコン9を再利用したものだ。そして、中央のロケットの第1段目もスペースX社のドローン船(無人船)に着陸することになる。(参考記事:「ロケットの垂直着陸に成功、ファルコン9で2例目」

 では、この偉業にかかるコストはどれほどなのだろうか。他社と比べれば、驚くほど少額だ。

ファルコンヘビーは、写真のスポーツカー「テスラ・ロードスター」を、太陽を回る軌道まで運ぶ計画だ。(PHOTOGRAPH FROM SPACE X)
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