ナスカの地上絵にトラック侵入、絶えない損傷

世界遺産を分断するハイウェー、「損傷は日常茶飯事」と研究者

2018.02.05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1月27日、ペルー人のトラック運転手が「キアべの木」として知られるナスカの地上絵を損傷した(写真は2014年に撮影されたもの)。(PHOTOGRAPH BY MARTIN BERNETTI, AFP/GETTY)
[画像のクリックで拡大表示]

 逮捕の理由が「文化遺産への攻撃」でなかったら、これほど大きなニュースになることもなかっただろう。

 ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」がトラック侵入により損傷し、1月29日、40歳のペルー人トラック運転手ハイネル・ヘスス・フローレス・ビゴが逮捕された。18輪のトレーラーを運転していた彼は、地上絵の上を約50mにわたり走行した。(参考記事:「ナスカ 文明崩壊の謎」

 フローレス容疑者は、南北米大陸を貫くパンアメリカンハイウェーを走行していた1月27日の夜、「機械的な問題」が発生したため、貼り出されていた掲示を無視して道を外れざるをえなかったと主張している。アルゼンチンの新聞は、フローレスが料金の支払いを避けようとして道を外れた可能性があるとしているが、ペルーの裁判所の判事は、彼の行動が故意であったと考えるに足る証拠はないと判断した。

 フローレスは現在保釈されているが、おそらく数日以内にペルー文化省が組織する聴聞会に出ることになる。検察当局は、彼に禁錮9カ月と罰金5000ペルー・ソル(約17万円)を課したいとしている。これは、ペルーの平均月収の約3.5倍の金額だ。

20世紀に注目浴びた古代の絵

 ナスカの人々は、西暦1年から700年頃にかけて、地表の酸化した砂利を30cmほど除去して、その下の白っぽい土を露出させるという方法で、1000点以上の地上絵を描いた。年間降水量が25mmに満たない乾燥した砂漠では、長さ数kmの直線や、幾何学図形や、動物をかたどった図形は、2000年近く変わらずに存在し続けることができた。(参考記事:「21世紀中に解明されそうな古代ミステリー7つ」

 学者がナスカの地上絵に目を向けるようになったのは、商業飛行がさかんになった1930年代以降である。地上絵が巨大すぎて、上空からしか全貌を確認できなかったからだ。それ以来、地上絵の起源について、天文カレンダー説から戦いの儀式に関連した記念碑説まで、多くの仮説が提案されている。(参考記事:「カザフスタンに謎の地上絵、NASAが撮影」

 当初の目的がなんであれ、ナスカの地上絵は毎年数万人の観光客が訪れる、ペルーを代表する貴重な文化遺産である。しかし、地上絵が損傷されたのは今回が初めてではない。

平穏を妨げる人々

 2014年、温暖化対策を協議する大規模な国際会議が行われている期間中に、環境保護団体「グリーンピース」の活動家が地上絵のある平原に侵入し、再生可能エネルギーの導入を呼びかけるメッセージを設置した。その際、立ち入り禁止区域にも多数の足跡をつけてしまったため、グリーンピースは世界中から非難を浴びた。グリーンピースは謝罪しているが、その足跡は今後数百年にわたって繊細な環境に残ることになるかもしれない。

【参考ギャラリー】圧倒的スケールで迫る、古代の巨大岩石建造物 写真8点
写真クリックでギャラリーページへ。

 しかし、ナスカ-パルパ調査プロジェクトを率いる考古学者のヨニー・イスラ氏は、ペルーのラジオ番組に出演して、トラック運転手が起こした今回のような損傷は「日常茶飯事」だと語った。地上絵の近くの道端からゴミを投げ捨てる人や、ソーシャルメディアに動画を投稿するために地上絵を踏むところを撮影する人もいるという。

 ペルーの国営報道機関アンディーナによると、ペルー文化省は主要なエリアについては毎日監視を行っているが、イスラ氏は、ドローンなどを使って遺跡全体の監視を行うことを提案しているという。

 ナスカの地上絵は現在、そこに近づきたがる観光客と、洪水が引き起こす泥流によって脅かされている。ユネスコの公式な説明によると、「ナスカの地上絵は広大な土地を、高度に象徴的で儀式的で社会文化的な景色へと変え、それが今日まで残っている。これらは世界に例を見ない、傑出した地上絵群である」とある。(参考記事:「もう見られない「失われた絶景」18選」

文=RACHEL BROWN/訳=三枝小夜子

おすすめ関連書籍

消滅遺産

もう見られない世界の偉大な建造物

現地へ行っても残っていない、失われてしまった姿を写真で見る。世界から消えても、記録は残った。

定価:本体2,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加